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17 章 抗生物質と耐性菌の出現

5.抗生物質と耐性菌
【解説】
 ペニシリンに代表される抗生物質は、病原菌を大変効果的に殺すため、人類の霊薬と思われましたが、すぐにペニシリンに耐性な病原菌が出現することが判明しました。耐性菌はペニシリンを分解する酵素(β-ラクタマーゼ)を生産し、ペニシリンを分解し、耐性を示します。病原菌は、抗生物質を分解する以外にも種々の巧妙な方法で耐性を獲得し、人類が耐性菌に効果的な新たな薬剤を開発するとすぐに新たな耐性菌が出現するといった状態が続いています。耐性菌は臨床上深刻な問題であり、特に、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA、バンコマイシン耐性腸球菌などが大きな問題となっています。

●メチシリン耐性黄色ブドウ状球菌(MRSA)
 メチシリンはβ-ラクタマーゼによって分解されないペニシリンとして1960年に開発されましたが、翌1961年には早くも「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant Staphylococcus aureus:MRSA)」が出現しました。その後1980年代に入ると、MRSAの医療施設においての分離頻度が急増し、MRSA感染症は院内感染症として臨床上極めて深刻な問題となりました。MRSAはその他の薬剤に対する耐性も次々に獲得し多剤耐性となり、現在ではバンコマイシンなどの限られた薬剤しかMRSA感染症に効果がありません。さらにバンコマイシンを用いても治療が困難なMRSAも登場しており、新たな薬剤が常に求められる状況が続いています。

●バンコマイシン耐性腸球菌
 腸球菌は腸管常在菌で、黄色ブドウ球菌に比べれば弱毒性ですが、末期患者や免疫能の低下した患者に感染しいわゆる日和見感染症を引き起こします。腸球菌にはMRSA同様の多剤耐性がみられ、院内感染症の原因菌となっています。中でもバンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin resistant Enterococci:VRE)はバンコマイシンに対して高い耐性を有し、臨床上大きな問題となっています。

【用語説明】
日和見感染症
平素は病原性を示さない弱毒性細菌(緑膿菌、腸球菌など)による感染症。

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