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10章 お酒の製造法
1.ビールの製造法
【解説】
ビールは、大麦とホップおよび水を主原料とします。強い発芽力と高いデンプン含量の大麦が、ビール製造に適しています。ホップはビールの苦みと香りの形成に寄与します。主原料以外に、米、デンプン、トウモロコシを糖質の副原料として用いる場合があります。ビールは、大麦のデンプンおよび副原料より得られた糖を微生物・酵母(Saccharomyces cerevisiae)でアルコール発酵(アルコール濃度1%以上)させた飲料です。ビール酵母は、発酵後期における浮遊性(上面発酵酵母)と沈澱性(下面発酵酵母)の性質により2種類に大別され、日本では下面発酵酵母が用いられています。
ビールの製造は、麦芽製造工程、麦汁製造工程、発酵工程、および製品工程から成ります。大麦に適度な水分を与えることにより発芽を促し、加熱により焙燥させた麦芽を調製します。麦芽と糖質副原料および水を混合し、糖質成分(デンプンなど)を麦芽由来の酵素・アミラーゼの作用により糖化・液化させて麦汁を製造します。麦汁にビール酵母を添加し、アルコール発酵を行います。発酵工程は、発酵性糖類がアルコールに変換される主発酵と溶存炭酸ガス濃度が上昇する後発酵に分けられます。発酵後、水温付近で貯蔵してから、濾過により清澄な生ビールおよびそれに続く加熱殺菌によりビールが完成します。ビールは、糖化とアルコール発酵を2段階に分けて行うので単行複発酵酒に分類されます。
【用語説明】
アルコール発酵
酵母が無酸素的に糖を分解し、エネルギーを獲得する様式。
C6H12O6→2C2H5OH + 2CO2
糖化・液化
デンプンなどの多糖を酵素により加水分解して還元糖に変換するプロセス。
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