|
7章 植物の生活環
12.老化
【解説】
植物の生育の最終段階として「老化」があります。しかし、植物の老化は動物と異なる側面をもっています。すなわち、動物の場合、老化は死に至る不可逆的な発生過程であるのに対して、植物では、ある段階までは、可逆的です。すなわち、老化の過程で、植物は、みずからのもつ栄養分、たとえば、タンパク質や核酸を分解し、新たに生長する(しうる)器官、生長点や種子に転流し、利用していきます。
老化には否定的な語感がありますが、植物の老化には果実の成熟も含まれており、植物は老化をより積極的に制御、利用していると考えられます。紅葉も落葉にいたる植物の葉の老化の過程であり、植物の環境適応と考えられます。このような老化の過程において、複数の植物ホルモンが機能していることが明らかになっています。また、老化の過程におけるさまざまな遺伝子の働きが現在、精力的に研究され、遺伝子レベルから、成熟を遅らせたトマトや、より長く老化を防ぎ光合成能力を高めた作物を開発する研究も進んでいます。
また老化は、広い意味でのプログラムされた細胞死といえますが、より急激な細胞死をもたらす過敏感反応が感染応答において観察され、感染防御に役立っています。それ以外にも、プログラム細胞死は、胚発生や種子形成、道管のような通道組織、通気組織の形成において観察され、植物の形態形成に重要な役割を担っています。
Copyright(c)2006 Japan Society for Bioscience,Biotechnology,and Agrochemistry. All Rights Reserved. |
|