|
5章 物質の代謝
6.光化学系の基本構造と機能
【解説】
光化学系の外側にある色素分子はアンテナタンパク質と呼ばれ、これに結合している多数のクロロフィル分子は光エネルギーにより、励起され高エネルギー状態になります。こうして吸収された光エネルギーは隣り合うクロロフィル間で効率良く受け渡され、最後に反応中心タンパク質の1つのクロロフィル分子(反応中心クロロフィル)に集中されます。高エネルギー状態になった反応中心クロロフィルからは電子が飛び出し、順序よく並んだ電子受容体に電子が順次受け入れられることで電子伝達反応が起こります。一方、電子を失った反応中心クロロフィルは強い酸化力をもち、電子供与体から電子を引き抜くことで電気的中性に戻ります。光化学系IIの電子供与体は水分子です。
クロロフィルなどの色素に吸収された光エネルギーは、環境条件が整った場合は、ほぼすべて光合成の電子伝達に使われます。しかし、湿度が低く気孔が閉じていて、太陽光が照射される場合などでは、炭酸固定反応で消費できる化学エネルギーを超える光エネルギーをクロロフィルなどの色素が吸収するため、過剰になった光エネルギーが、活性酸素の生成など植物にとって不都合な現象を引き起こします。また、過剰なエネルギーは、熱やクロロフィル蛍光として放出されます。この現象を利用したクロロフィル蛍光の測定で、光合成の機能を判定することができます。クロロフィル蛍光の測定は、光合成を阻害するタイプの除草剤の効果の検証にも利用できる新しい技術です。
Copyright(c)2006 Japan Society for Bioscience,Biotechnology,and Agrochemistry. All Rights Reserved. |
|