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5章 物質の代謝

5.光合成の過程
【解説】
 光合成のプロセスを単純化すると、光のエネルギーを用いて水を分解し、ATP(高エネルギー化合物)とNADPH(還元力供与化合物)という代謝系で「通貨」のような役割を果たす分子を合成するプロセス(光合成的電子伝達系;いわゆる明反応)と、これらの「通貨」を用いて二酸化炭素を固定するプロセス(炭酸固定系;いわゆる暗反応)からなります。明反応は、葉緑体のチラコイド膜に存在する一群の電子伝達系タンパク質によって、暗反応はストロマに存在するカルビン回路を形成する酵素群によって反応が行われます。
 カルビン回路において最も重要な炭酸ガス固定反応を触媒するのがリブロース1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼという酵素で、通称Rubisco(ルビスコ)と呼ばれています。光合成生物である光合成細菌、藻類、植物などでは、ルビスコが炭酸ガス固定を行う唯一の酵素です。このため、わたしたちを含む地球上の生命維持はルビスコの反応に依存しているということができます。
 こうした光合成のプロセスはさまざまな要因によって阻害されたり、活性化されたりします。農芸化学の分野においては、こうした光合成系を理解するとともに、その発達を制御する仕組み、たとえば、光合成系を十分に発達させるための栄養分、たとえば、窒素肥料などの効果についての研究が行われています。同時に、これらのプロセスを阻害することにより、植物の生長を阻害し、雑草を殺す除草剤の研究も進められています。

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