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1 章 アミノ酸・ペプチド・タンパク質

7.ペプチド・タンパク質の構造
【解説】
●一次構造:ペプチドやタンパク質は、遺伝子配列情報に従って多数のアミノ酸が鎖状にペプチド結合でつながった構造をしています。このアミノ酸の並ぶ順序を「一次構造」と呼び、1つひとつのアミノ酸を「残基」と呼びます。一次構造には2つの末端が存在し(環状ペプチドを除く)、ペプチド結合で使われていないアミノ基を持った末端を「N末端」、同様にフリーのカルボキシル基を持った末端を「C末端」と呼びます。一般的に図で示す場合は、N末端を左側になるように描きます。 

●二次構造:主鎖の水素原子(H)と酸素原子(O)は「水素結合」により引き合う力が作用します。その結果タンパク質の主鎖は、部分的に折りたたまれた立体構造をとります。また、立体構造をとらない部分を「ランダムコイル」と呼びます。

●三次構造、四次構造:タンパク質分子は、主鎖や側鎖間で共有結合(ジスルフィド結合)、水素結合、イオン結合、疎水結合などのさまざまな相互作用を受け、全体の立体構造が完成します。これを三次構造と呼びます。この結果、一次構造上では遠く離れていたアミノ酸残基が立体的に近接したり、タンパク質分子の表面に凸凹が生じて他の物質が結合するためのポケットが形成されたりします。また、タンパク質分子が複合体を形成する場合があり(四次構造)、それぞれのタンパク質分子を「サブユニット」と呼びます。たとえば、血中のヘモグロビンはaサブユニットが2個、bサブユニットが2個の計4つのタンパク質分子が集合して形成されたタンパク質です。

●シャペロンとBSE:正しい二次構造をもったタンパク質溶液に尿素などの変性剤を加えると、水素結合が乱されて二次構造が壊れてしまいます。しかし、透析などで変性剤を取り除くと、再び元の正しい立体構造に戻ることから、「二次構造は一次構造により自動的に決まる」と考えられていました。ところが最近の研究で、正しい立体構造になるよう手助けをするタンパク質(シャペロン)の存在が明らかになり、従来説が修正されました。また、最近話題の牛スポンジ脳症(BSE)の病原体であるプリオンは、265個のアミノ酸残基からなるタンパク質そのものであり、体内にもともと存在する正常プリオン(α-へリックスに富む)が、何らかのメカニズムで異常型プリオン(β-シートに富む)に変化することで病原性を示すことが明らかになりました。

【用語説明】
立体構造
α-へリックス構造:アミノ酸残基のO原子と、その3つ先のアミノ酸残基のH原子が水素結合して螺旋状になったもの。一般のタンパク質のアミノ酸残基の約1/4が該当するといわれています。

β-シート構造:主鎖が一直線上に伸び、何本か水素結合で束ねられて板状(平面的)に並んだ構造。主鎖が同じ向きに並ぶ「並行型」と、逆向きで並ぶ「逆並行型」があります。
どの構造をとるかは、側鎖の構造で決定されます。

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