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16 章 食品の安全性

10.鳥インフルエンザ
【解説】
 「鳥インフルエンザ」は、鳥インフルエンザウイルスが感染して引き起こされる家禽類を含む鳥類の疾病の総称です。ウイルスは、鶏を含む家禽類に対して種々の病原性を示します。激しい臨床症状を伴い、非常に高い死亡率をもたらす急性の疾病から、軽い呼吸器症状や産卵率の低下など、症状はさまざまです。鳥インフルエンザの病原体はA型インフルエンザウイルスであり、ウイルスの自然宿主は鳥類、とくにカモなどの水禽類があげられます。発病鶏との濃厚な接触や、鶏糞などに濃厚にいるウイルスを呼吸器官から吸引しない限り、ヒトには感染しません。鳥インフルエンザウイルスは加熱や酸に弱いため、鶏肉や卵は通常の調理操作で安全性がより高くなります。
 このウイルスの粒子表面には2種類のスパイク、すなわち赤血球凝集能のあるHとノイラミニダーゼ活性を有するNがあります。その抗原性から、Hは1〜16にまで、Nは1〜9にまで分類され、スパイクの組み合わせの可能性は、論理的には「16×9=144 」となります。ウイルスの病原性に直接関連しているのはHスパイクであり、鶏に高病原性を示すのは5型と7型です。2005年に発生した鳥インフルエンザウイルス(H5N1亜型)でもっとも懸念されていることは、突然変異や遺伝子の組換えによってヒトのウイルスが豚に同時に感染し、遺伝子の組換えが起こり、毒性の強い、ヒトに感染する可能性のある新型鳥インフルエンザが出現することです。

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