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10章 お酒の製造法
2.日本酒の製造法
【解説】
日本酒は、米と水を主原料とします。大粒であり、タンパク質含量の低い酒造好適米が使用されています。また、鉄・マンガン含量(0.02ppm以下)の低い水が日本酒製造に適しています。日本酒製造には2種類の微生物が不可欠であり、米のデンプンを糖化する麹カビ(Aspergillus oryzae)と、その糖をアルコール発酵する酵母(Saccharomyces cerevisiae)が重要です。日本酒は、原料および精米歩合により、10種類に分類されます。また、日本酒度と酸度を調べることにより、呈味性(甘辛・濃淡)を評価することができます。
日本酒の製造は、原料処理工程、製麹工程、酒母製造工程、発酵(仕込)工程、および上槽・火入れ工程から成ります。玄米を処理し、精米歩合として50〜70%程度の白米にします。蒸米に麹カビを繁殖させ、糖化酵素を生産させます。麹と水を混合したものに乳酸と酵母を添加し、培養することにより酒母を調製します。酒母に蒸米と麹米および汲み水を仕込み、もろみを本発酵します。酵母の増殖、酸の生成及び汚染菌の繁殖を制御するために、3回(初添、仲添、留添)に分けて仕込みます。発酵を終えたもろみを圧搾機にかけて、清酒と酒粕に分離します(上槽)。さらに清酒を濾過した生酒を、火入れと呼ばれる加熱操作により殺菌と残存酵素の不活化を行い、原酒とします。
【用語説明】
精米歩合
白米の玄米に対する重量比。芳香性や呈味性を左右するタンパク質、脂肪、灰分、ビタミンなどを多く含む米の表層部や胚芽を精米により少なくします。
日本酒度
日本酒の比重を−20〜+10で示す単位。(+)比重が軽く、糖分が少ない(辛口)。(−)比重が重く、糖分が多い(甘口)。
酸度
日本酒10mLを中和するのに必要な0.1規定水酸化ナトリウム水溶液の体積(mL)。
・酸度高:有機酸(乳酸、リンゴ酸、コハク酸)が多い(濃醇)
・酸度低:有機酸が少ない(淡麗)
乳酸
乳酸は酒母作製時に雑菌の繁殖を抑制するために添加します。酒母は市販乳酸を添加して製造する速醸もと、並びに乳酸菌(Leuconostoc mesenteroides, Lactobacillus sake)を添加して製造する生もと・山廃もとに大別されます。
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