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7章 植物の生活環
6.伸長生長
【解説】
植物の生長を特徴付けるものに、伸長生長があります。「伸長生長」は温度や光など、さまざまな環境条件に左右されますが、植物ホルモンの重要性が明らかになっています。たとえば、ジベレリン、ブラシノステロイド、オーキシンなど、伸長生長を促進するものと、アブシジン酸、エチレン、サイトカイニンのように抑制するものがあります。
伸長生長には、細胞分裂による伸長方向への細胞の数の増加と、細胞自体の体積が大きくなる成長の2つの要因があります。細胞分裂は遺伝的にプログラムされており、環境によって伸長生長が変化する際にも、分裂そのものは大きな変化は示しません。一方、細胞の伸長は環境によってダイナミックな変化を示し、植物の伸長生長の主となる要因となっています。細胞の伸長には、細胞を内側から押し広げようとする力が必要です。この力は細胞が液胞という細胞内器官に取り込んだ水分によって生まれます。水分を取り込んで液胞の体積が増すと、細胞膜さらには細胞壁を外へと押し広げようとする圧力が生じます。この圧力を膨圧と呼びます。
膨圧により細胞が膨らもうとしたとき、細胞のどの方向に膨らむことができるかによって、伸長方向は決められます。この方向を決めるのがセルロース微繊維と呼ばれる、細胞壁に存在する堅い繊維質です。もし、セルロース微繊維が一定の方向に並ぶと、その並びと垂直の方向に伸長することはできますが、平行方向にはセルロース微繊維が足かせとなって伸長できません。セルロース微繊維の向きは、細胞膜の内側に生じる細胞質表層微小管の向きにより規定されています。また、微小管の向きは、ホルモンによって制御されています。ブラシノステロイドやジベレリンは伸長方向と垂直方向の微小管を増やすことにより伸長生長を促進し、逆に、エチレンやサイトカイニンは、伸長方向と平行方向に微小管を増やすことによって伸長生長を抑制します。
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