実行委員長挨拶
日本農芸化学会2013年度大会開催にあたって
宮澤陽夫
日本農芸化学会2013年度大会を開催するにあたり、一言ご挨拶申し上げます。
2013年度大会を、3月24日(日)から28日(木)の5日間の日程で仙台市内におきまして、開催させていただくことになりました。全国から多くの会員のみなさまが、東北の地に集って有意義な時を過ごしてくださることを心より期待しております。
実行委員会のメンバー一同はこれまで懸命に準備をして参りました。東北支部での年度大会開催は、2002年度大会以来、11年ぶりということになります。当時の日程は今回と全く同じですが、会場は、仙台市北部の東北学院大学教養部泉キャンパスを拝借してのものでした。私は当時大会実行委員会の総務をさせていただいておりましたが、バスの手配や会場確保のことで大変であったことを今でも想い出します。
2010年の理事会で決定されたスケジュールに沿って2012年度大会を仙台で開催すべく東北大学の会員を中心に実行委員会を組織し、開催日程と会場を確定させ、鋭意準備を進めておりました。ところが、2011年3月11日に、我が国に未曾有の被害をもたらすことになる東日本大震災が発生しました。
私はこの日、カロテノイドについての国際シンポジウムに参加していて、ボストンにあるタフツ大学のヒトの老化に関する栄養研究所におりました。日本で大地震・津波・原発事故があったとの極めてリアルなテレビ報道をみて急遽、帰国いたしました。その時、米国、中国、ヨーロッパの友人達からは、我が国の戦後の驚異的な社会復興と経済発展の底力、世界最高の科学技術の実力をもってすれば、今回の大震災にも日本は世界の手本になるように必ずや着実に復活するだろうから、是非頑張ってほしいとの声援をいただきました。
帰国してすぐ農芸化学会事務局で清水前会長(当時会長)、太田現会長(当時副会長)とともに対応策について意見交換しました。太田会長からの提案は、放射能汚染の回復は長引くだろうから福島を通らなければならない仙台大会を順延し、京都大会を2年連続させてはどうかという内容でした。
早速、1年順延した時の会場確保の可能性を東北大の実行委員会メンバーに確認してもらい、その結果をみてから、1年順延案を受けさせていただきました。若手教授の実行委員の中から、折角ここまで準備してきていること、震災復興の東北の姿を是非全国の会員にみていただきたいことなど、力強い前向きな意見を沢山もらったのもこの頃です。当たり前ですが年度大会はお引き受けした以上順延等しないのが望ましいのです。仙台にもどり再度、2013年度大会のための実行委員会を組織し直し、今日に至っております。
仙台大会の主テーマは、「長寿少子社会への農芸化学の貢献、農芸化学と産業界の連携、大震災における農芸化学の役割」です。多様な領域の研究成果を基礎にして生命の理解と応用を目指している現在の農芸化学の目覚ましい発展の姿が如実に映し出されます。
大会初日の24日は、午前中に仙台市内の広瀬通り沿いの江陽グランドホテルで化学と生物シンポジウムを、午後は近接する電力ホールで授賞式、受賞者講演があり、その後、江陽グランドホテルで懇親会を開きます。25日から27日まで東北大学川内北キャンパスで、一般講演、ランチョンセミナー、ランチョンシンポジウム、機器・試薬・書籍等展示会があり、公募シンポジウムは27日に行います。
ジュニア農芸化学会は25日午後、JABEEランチョンは26日、産学官学術交流委員会フォーラムとミキサーは26日午後、さらに、農芸化学Frontiersシンポジウムは27日と28日に1泊2日で秋保温泉のリゾートホテルクレセントで開かれます。
大会の一般講演はすべて口頭発表であり、プロジェクターが設置された各会場の書画カメラで発表していただきます。大会では新情報の発信と受容の場を通して、活発な議論がなされ新たな研究ネットワークが醸成されることを心から願っております。
かつて経験したことのない絶望感や衝撃をもたらした大震災ですが、その反面、日本人の節度ある行動を世界のメデイアが賞賛し、被災現場で皆が協力して懸命に事態収拾にあたる姿に、明日への希望を見ることができました。
本大会を開催するにあたり、多くの企業・団体からのご寄付、展示、ランチョンセミナー、広告掲載などご支援をいただきましたことに対し、心から御礼申し上げます。
東北大学川内キャンパスは、伊達政宗公が築いた青葉城二の丸跡に位置し、青葉山と広瀬川に囲まれた、仙台で最も歴史に富み景観に恵まれたところです。花の便りも聞こえる春3月弥生の時に、復興とともに活力に満ちて元気になった東北の学都仙台に、全国から多くの会員が参集されることを期待しております。