第8回 農芸化学会 サイエンスカフェ
ご参加頂いたみなさま、ありがとうございました。
概要
日時 | 2007年11月10日(土) 午後3時より4時10分まで |
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場所 | 三省堂書店神保町本店2階 喫茶「ピッコロ」 |
テーマ | 土に隠れた宝物を探しに |
講師 | 遠藤 章氏 バイオファーム研究所代表取締役所長 東京農工大学名誉教授 |
講師略歴 | 1957年3月 東北大学農学部農芸化学科卒、同年三共(株)入社 1966年 農学博士 1966-68年 アルバート・アインシュタイン医科大学(米国)留学。 三共(株)醗酵研究所主任研究員、研究室長を経て、 1979年1月 東京農工大学農学部助教授 1986年12月 同教授 1997年3月 定年退官 同年4月 同名誉教授、(株)バイオファーム研究所代表取締役所長 2003年7月 金沢大学客員教授 2007年6月 東北大学特任教授、現在に至る 農芸化学賞、東レ科学技術賞、ウィーランド賞(ドイツ)、アルパート賞(米国)、日本国際賞、マスリー賞(米国)等を受賞。秋田県名誉県民、由利本荘市(秋田県)名誉市民、日本脂質生化学会名誉会員、日本農芸化学会名誉会員。 著書:「自然からの贈りもの-史上最大の新薬誕生」(メデイカルレビュー社、06年)、「新薬スタチンの発見-コレステロールへの挑戦」(岩波書店、06年)。 参考:「世界で一番売れている薬」(山内喜美子著:小学館、07年) (本書はスタチン開発の歴史を遠藤章の伝記風にまとめたノンフィクション作品) |
コーディネーター | 吉川 学 氏 毎日新聞科学環境部 |
共催 | 三省堂書店 |
内容 | 私は1933年に東北地方の山村の農家に生まれ、小川、野山、田園風景が織りなす豊かな自然の中で育ったので、土をはじめ、川と沼の魚、水辺と野山の昆虫、野生動物、鳥類、植物などの生き物には幼少の頃から毎日親しんでいた。中でも祖父から教わったキノコと母の麹づくりを手伝って知ったカビの働きには強い興味があった。太平洋戦争と重なる小学生時代は 野口英世のような医学者になりたいと思った。敗戦後は大変な食糧難が続いたので、大学を出たら農業技師か農学者になって食料増産のために働こうと考えて農学部に入った。しかし入学1年後には、青カビからペニシリンを発見したアレキサンダー・フレミング博士の伝記を読んで感動し、博士のように人の命を守る仕事をしたいと思うようになった。化学が好きでカビとキノコに興味があったのでなおさらだった。 卒業後入社した会社では、希望したハエトリシメジ(ハエを殺すキノコ)の研究はできなかったが、入社2年後には、カビとキノコからペクチナーゼという酵素(ぶどう酒などの澄明化に用いる)を発見して商業化に成功した。その後の米国留学(66-68)で、米国では死亡者が断トツ1位の心臓病の主要原因が高コレステロール血症だと知って、帰国後カビとキノコからコレステロール低下剤を開発しようと考えた。71年から2年間で6,000株のカビとキノコを調べて、73年に青カビから目的の物質(コンパクチン)を発見した。その後ラットに効かない、肝毒性がある、発がん性があるなどの難問に再三出くわして、コンパクチンは薬にならなかったが、その同属体(スタチン)のひとつが87年に米国で商業化された。その後6種のスタチンが商業化され、現在心臓病の画期的な特効薬として、世界中で毎日3,000万人以上の患者に投与されている。スタチンの年間売り上げは3兆円に達した。 スタチンの開発が一段落した78年末に会社を辞めて大学に移り、微生物の応用研究を続けた。18年余の在職中にカビから2番目のスタチンであるロバスタチン(モナコリンK)を発見し、カビから発見した歯垢形成阻害剤入りのガム、食品素材に用いる紅麹、メバロン酸入りの化粧品、新コレゲナーゼ(研究試薬)などの商業化に成功した。大学の定年退職(97年)後は、小さな研究所をつくって、微生物の応用研究を続けている。 |
参加者の方のご意見
- 始めのBGMは消したほうがいい。話が聞こえない。内容はすごく感銘を受けました。もう少し聞き取りやすいともっといいです。
- 先生の生い立ちというか、なぜ、一生の研究に至ったか…という必然が感じられ、とても豊かな気持ちになりました。
- 先生のお話の内容がギュッと詰まっていて面白かった。
- 面白かった。研究に至る背景も分かって、とても興味深く拝聴できました。“30半ばだから、2、3年ムダになってもいい。やりたい事をやろう”という精神がすばらしい。自分もがんばろうと思いました。