第43回さんわかセミナー「AI・センシング技術が拓く世界」
報告
2024年11月11日(月)に第43回さんわかセミナーを東京大学・弥生講堂アネックス セイホクギャラリーにて実施しました。企業研究者や大学の教員を中心に約20名の方にご参加いただきました。4名の講師の先生方から、タンパク質の「折りたたみ反応」を予測する物理学理論、AIを用いたシングルセル解析、SERSラマンを用いた生体センシング、家畜感染症の発生予知と予防システムの開発と最先端のAI・センシング技術についてご講演頂きました。
- 新井先生からは、タンパク質のフォールディング問題に関するご講演をいただきました。これまでタンパク質の折りたたみ反応過程を普遍的に説明可能な理論は存在しませんでしたが、既存のWSMEモデルを大きく改良したWSME-Lモデルを構築することで、あらゆるタンパク質の折りたたみ反応過程を予測することが可能になりました。また、本モデルを活用したタンパク質製造プロセス改良、変異体開発等の応用面での研究もご紹介され、理論科学を産業へ応用可能な具体例として大変勉強になりました。
- 神保先生からは、生命科学分野で近年ますます注目されているシングルセルRNA-Seq解析へのAI技術導入についてご講演いただきました。具体的には、大規模言語モデルとの比較を通じて解析技術の基盤を非常にわかりやすく説明していただき、さらには遺伝子発現情報に空間情報を組み合わせた最新の解析技術についてもご紹介いただきました。データ量が飛躍的に増加する現代の生命科学研究において、AIが果たす役割の重要性と、技術の進展がもたらす研究の新たな視点や応用の可能性を実感できる、非常に意義深いご講演でした。
- 北濱先生からはSERS ラマンを用いたウェラブルデバイスの開発に関するご講演を頂きました。ラマン分光は特異性が高く、水に不活性であることから生体センシングと非常に相性が良いものの、感度および再現性が乏しいことが大きな課題でした。そこで、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して10^8倍まで感度を増強するとともに、銀/金粒子をPVAナノメッシュに蒸着させたSERS基盤を開発することで、再現性の向上にも成功されています。ナノメッシュ基盤は伸長性、柔軟性に優れていることから生体適合性も高く、ウェラブルデバイスへの応用も期待できます。様々な「見える化」に繋がる画期的な技術であり、非常に興味深いご講演でした。
- 福田先生からは、家畜感染症の発生検知と予防に向けた気中ウイルス捕集・検出・不活化システムの開発についてご講演いただきました。この技術により、気中に漂うウイルスを定量的に捉え、PCR検査で検出することで、リスク管理やまん延防止に大きく貢献が可能となります。さらに、自動センシングシステムやウイルス不活化装置の開発・導入を通じて、社会実装を目指されている点も強調されました。「技術ができましたで終わらせてはならない」とのお言葉には私自身も強い感銘を受け、大変勉強になるご講演でした。
アンケートでは講演内容に関して高評価頂きました。一方で、オンラインあるいはハイブリッドで開催してほしいといったご意見を多数頂きました。今後のセミナー活動に活かして参ります。今回、ご多忙中にも関わらずご講演を快くご承諾いただきました講師の先生方、ならびにご参加いただきました多くの皆様に改めて御礼申し上げます。今後とも、さんわか活動にご協力・ご参加いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。
さんわか11期 小野、佐々木、松田、矢野
概要
タイトル | 「AI・センシング技術が拓く世界」 |
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主催 | 日本農芸化学会 産学官若手交流会(さんわか) |
ポスター | 第43回さんわかセミナー ポスター(PDF) |
開催趣旨 | 近年、AI技術は飛躍的な進展を遂げており、医療や創薬、農業、教育など様々な分野で活用されています。さらに、センシング技術との融合により、より高度なデータ収集、解析が可能となり、新たな価値の創造に繋がっています。そこで、本セミナーは当分野においてご活躍の先生方をお招きしてAIやセンシング技術がバイオ、ライフサイエンス分野においてどのように活用されているのか、またこれら技術の展望について学べる企画となっております。ご興味のある皆様方のご参加をお待ちしております。日本農芸化学会会員ではない方のご参加も歓迎いたします。 |
日時 | 2024年11月11日(月)13:30~17:00 |
会場 | 東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部 弥生講堂 アネックス セイホクギャラリー |
アクセス | 地下鉄 ・東京メトロ 東大前駅(南北線)徒歩1分 ・東京メトロ 根津駅(千代田線)徒歩8分 都バス 御茶ノ水駅(JR中央線、総武線)より 茶51駒込駅南口又は東43荒川土手操車所前行 東大(農学部前バス停)下車徒歩1分 |
プログラム | 13:30 開会挨拶 13:35~14:15 「タンパク質の「折りたたみ反応」を予測する物理学理論」 新井 宗仁 氏(東京大学大学院総合文化研究科) 14:20~15:00 「AIで創るシングルセル解析の未来」 神保 岳大 氏(GMO学術サポート&テクノロジー株式会社 / 神戸大学大学院医学研究科) <休憩> 15:20~16:00 「ウェアラブル分光学が拓く新世界」 北濱 康孝 氏(東京大学大学院理学系研究科化学専攻)※ ※合田 圭介 氏(東京大学大学院理学系研究科/株式会社LucasLand)から急遽交代にてご講演 16:05~16:45 「家畜感染症の発生検知と予防に向けて–気中ウイルス捕集・検出・不活化システムの開発–」 福田 隆史 氏(産業技術総合研究所 センシングシステム研究センター) 16:50 閉会挨拶 |
要旨集 | 要旨集(PDF) ※講演要旨集はパスワードを設定しております。ご参加者登録者様には別途メールにてパスワードをご案内いたします。 |
参加費 | 無料 |
定員 | 60名 |
参加申込 | お申込みは参加申し込みフォームからお願い致します。 |
申込締切 | 2024年11月8日(金)20:00 ※当日参加も可能 |
問い合わせ先 | 日本農芸化学会 産学官若手交流会(さんわか) sanwaka.jsbba●gmail.com (「●」を「@」に変換して送信してください) |