第41回さんわかセミナー「伝える科学、伝わる科学」
報告
2024年1月22日(月)に第41回さんわかセミナーをZoomウェビナーにて実施しました。企業研究者や大学の教員、学生だけでなく、一般の方含めて総勢230名の方にご参加いただきました。4名の講師の先生方から、生命科学データベース・ウェブツール普及や使いこなしのポイント、古生物学の研究活動と書籍・講演・博物館展示などを通したアウトリーチ活動、イラストを介したサイエンスコミュニケーション、現代社会で求められるサイエンスコミュニケーション、といった挑戦的な内容で講演いただきました。ZoomのQ&A機能を利用した質疑は絶えず、盛況を収めることができました。
- 生命科学実験系研究者に対する便利ツールの紹介や技術習得導入を目的として小野先生が運営・編集しているTogoTV (https://togotv.dbcls.jp/)のコンセプトや立ち上げ、利用方法、今後の展望などについてご講演いただきました。2007年から小野先生が中心となり運営開始した同サービスでは、文献の検索・管理方法から生命科学に関する様々なデータベース利用法・解析技術等を学ぶための動画など2100本以上に加え、出展明記だけで使用できる様々なイラストが全て無料で利用できることなどが紹介されました。生命科学研究では、実験技術に加えて大量の情報を適切かつ効率的に処理する技術もますます必要になってきているため、今回のご講演内容は、様々なご所属・ご専門の聴講者の皆様にとっても非常に有意義なものになったと思います。 当日の小野先生の発表資料(PDF)はhttps://bit.ly/20240122_honoにアップロードされています。
- 相場先生からは、ご専門のアンモナイトを中心とした古生物学について、また研究活動と並行して取り組まれてきた様々な層を対象とした多岐に渡るアウトリーチ活動についてご講演いただきました。効果的な教育・普及活動を実現するためには、まず研究者として行う研究活動が確固たる土台としてあることの必要性を改めて深く感じました。実際、古生物学に興味を掻き立てられた質問も多く寄せられ、伝える技術を目の当たりにする体験ができました。実例を多く交えてくださり、教育・普及活動の意義について主体的に考える契機になった方も多いと思います。さらに研究活動とのバランスや、コラボレーションを依頼する際に考えておくことなど、今後に活かしたい有益な視点を得ることができました。
- 木下先生からは、研究者・科学の専門家と社会の人々をつなぐためのイラストを介したサイエンスコミュニケーション(サイエンスイラストレーション)に関して、総説からご自身のお仕事の実例まで、イラスト作品を交えながら詳細なご講演をいただきました。作品を作り上げる過程においては、研究者との意見交換だけでなく、イラストを見る一般の方(受け手)の印象も想定する必要があり、科学的な専門知識だけでなく、コミュニケーション能力も重要であることをご紹介いただきました。研究成果のアウトリーチにあたって、グラフィカルアブストラクトや、プレスリリースなど、視覚的に幅広い対象の興味・関心を引くとともに、内容をわかりやすく解説するためにサイエンスイラストレーションは欠かせない役割を担っており、今後もますます活用の輪が広がっていくことが伺えました。
- 寒竹先生からは、現代社会において求められるサイエンスコミュニケーションとは何か、そしてそれを担うためにはどのような能力やアプローチが必要となるのか、という点について、理系ライターであり小説家でもあるという寒竹先生独自の視点からご解説いただきました。科学情報を積極的に求める人々だけでなく、科学にはそれほど興味がない大多数の人々に対してどのようにして正確な情報を伝えるべきなのか。その難しさをお話ししていただいた一方で、科学者とサイエンスコミュニケーター、そして文章やイラストなどを駆使しそれを一般の方々に伝えるプロがより緊密に連携することができれば、問題解決の糸口になり得るというアイデアもご紹介いただきました。サイエンスコミュニケーションの本質に迫る、非常に興味深いご講演でした。
※寒竹先生の質疑応答未回答質問への回答はこちら※
アンケートでは講演内容に関して高評価頂きました。また次回以降のセミナーで扱うテーマについても有意義なご意見・ご期待を賜りました。今回、ご多忙中にも関わらずご講演を快くご承諾いただきました講師の先生方、ならびにご参加いただきました多くの皆様に改めて御礼申し上げます。今後とも、さんわか活動にご協力・ご参加いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。
さんわか11期 石川、小野、加藤、佐々木、永嶌
概要
タイトル | 「伝える科学、伝わる科学」 |
---|---|
主催 | 日本農芸化学会 産学官若手交流会(さんわか) |
ポスター | |
開催趣旨 | インターネットを介した様々なメディア媒体やAI等の普及により、わたしたちが発信または取得する情報の量・種類はますます増加し複雑になってきています。こうした中、情報をどのように活用し、どのようにすれば狙った受け手に正確に届けられるのかは、研究活動やビジネスに限らず、日常のあらゆる場面で重要な課題です。そこで、今回のさんわかセミナーでは「伝える科学、伝わる科学」と題し、生命科学の情報発信に関してユニークな取り組みをされている先生方による講演会を企画しました。様々な視点から、そのコツや事例、今後の展望などを紹介していただきます。 講演は、 ・生命科学データベース・ウェブツール普及や使いこなしのポイント ・古生物学の研究活動と書籍・講演・博物館展示などを通したアウトリーチ活動 ・イラストを介したサイエンスコミュニケーション(アウトリーチ活動、科学論文図解など) ・現代社会で求められるサイエンスコミュニケーションとは といった、普段はなかなか聞けない内容になっているかと存じます。オンライン開催で参加費は無料です。農芸化学会会員ではない方の参加も歓迎いたします。 |
日時 | 2024年1月22日(月)13:00~16:30(予定) |
開催方法 | Zoomウェビナー配信 |
プログラム | 13:00 開会 13:05~13:45 「TogoTV: バイオインフォマティクスツールとデータベースの動画教材・資料および生命科学イラストのためのポータルサイト」 小野 浩雅 氏(大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 データサイエンス共同利用基盤施設 ライフサイエンス統合データベースセンター (DBCLS) 特任助教) 13:45~14:25 「古生物学の研究活動とアウトリーチ活動:何のために研究し、何のために成果を発信するのか?」 相場 大佑 氏(公益財団法人深田地質研究所 研究員) <休憩> 14:45~15:25 「研究成果を広く伝えるためのサイエンスイラストレーション」 木下 千尋 氏(農学博士・イラストレーター) 15:25~16:05 「世の中に必要とされるサイエンスコミュニケーションと、それを担うために必要な能力について」 寒竹 泉美 氏(理系ライター・小説家) 16:10 閉会 |
参加費 | 無料 |
定員 | 200名 |
参加申込 | お申込みは参加申し込みフォームからお願い致します。 |
申込締切 | 2024年1月19日(金)12:00 |
問い合わせ先 | 日本農芸化学会 産学官若手交流会(さんわか) sanwaka.jsbba●gmail.com (「●」を「@」に変換して送信してください) |