報告

2020年8月31日、Zoomウェビナーにて、「ベンチャー立ち上げのリアル」と題したセミナーを開催しました。起業を経験された、あるいは起業をサポートされている先生方をお招きして、ご自身の起業経験や起業に必要なマインド、これからの時代に必要な心構えについてご講演頂きました。初めてのオンライン開催だったにもかかわらず、当日は大学・企業・公的研究機関から、100名以上の方にご参加いただきました。以下、各講演について簡単にご報告いたします。

  • 株式会社ジーンクエスト代表取締役社長の高橋祥子先生からは、博士課程の在籍中にパーソナルゲノムサービスのベンチャーを立ち上げた経験をお話ししていただきました。遺伝子研究に没頭するなかで、「研究成果を世に発信する」「研究を加速する」という2つの目的を達成するためには、起業が最適という結論に至ったとのことでした。そして周囲の理解・協力を得ながら起業し、個人向けの遺伝子解析サービスを提供すると同時に、蓄積したデータを活用した遺伝子研究を進められました。これより事業と研究のシナジーを生み出し、多くの研究成果を創出されました。ご講演の後半では、実際にアジアでのパーソナルゲノムサービスという新市場を形成するにあたって直面している課題や、遺伝子情報をはじめとする生命科学のビッグデータが創り出しつつある個別化ヘルスケア産業についてもご紹介いただきました。農芸化学分野出身の起業家として第一線を走る高橋先生のお話に、多くの聴講者が勇気づけられたことと思います。
     
  • 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会理事の石橋良造先生からは、起業やベンチャーマインドに関して、ポジティブ心理学の視点からお話ししていただきました。起業の目的(人生の目的)を「幸福を得るため」と捉えた上で、自分の「幸福度」を数値として測定する方法、幸福度と相関のある要素(例えば感謝や楽観性など)、持続的幸福を得るためのウェルビーイング理論などについて紹介していただきました。自分の心理的な状態を客観的数値で把握し、ネガティブ感情に引きずられすぎないようにコントロールしていくことで、ベンチャー起業にともなうストレスや精神的な負荷を乗り越えていく、というポジティブ心理学の方法論は、起業家だけではなく我々の人生の様々な場面で役立つのではないかと思います。
     
  • 株式会社ウィライツ取締役の澤⽥佳佑先生からは社内起業のご経験、その支援をされた株式会社ゼロワンブースター共同代表の合⽥ジョージ先生からはイノベーションを起こすための心構えについてお話していただきました。澤田先生は、大手企業に所属しながら、創業したばかりのウィライツに参画され、事業の立ち上げに携わられました。業務内容が多岐に渡ることや不確実性の連続であることなど、創業期ならではの困難がある一方で、大手企業では機会の少ない新事業の立ち上げを経験でき、失敗を恐れず「実行すること」の重要性を強く実感されたとお話しになりました。また、創業期ベンチャーへの参画は、不確実性自体を楽しめるような気質であることが大切とも感じられたとのことで、これは前演題の石橋先生のお話ともリンクし、リアルな起業のお話を伺うことができました。合田先生からは、社会を発展させ続けるためにはイノベーションが不可欠であるという強いメッセージと共に、そのために必要な能力や心構えについて総論的にお話しいただきました。特にこれからの時代には「勇気・行動・社会関係資本」を重視し、すべての人が起業家的になることが肝要であるということでした。そのうえで、イノベーションは一部の天才だけが起こすものではなく、むしろフォロワーが共感を通して助け合うことで生まれるとお話になりました。社会関係資本を大切にし、勇気を持って行動することで誰もが社会を動かす原動力となり、世界を変える起爆剤となりえるということは、激動の時代に生きる我々にとって、生き方の一つの指針となるのではないかと思います。

各講演後の質疑応答および最後のフリーディスカッションでは、ZoomのQ&A機能を利用した活発な意見交換を行うことができました。本セミナーが皆様の今後のご活動の一助となれば幸いに存じます。ご多忙中にも関わらずご講演を快くご承諾いただきました講師の先生方、ならびにご参加いただきました多くの皆様に改めて御礼申し上げます。今後とも、さんわか活動にご協力・ご参加いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

さんわか9期 小泉、近藤、木村、松井

概要

タイトル 「ベンチャー立ち上げのリアル」
主催 日本農芸化学会 産学官若手交流会(さんわか)
開催趣旨

日本において、ユニコーン企業(企業としての評価額が10億ドル以上で、非上場のベンチャー企業)となる可能性を秘めているベンチャー企業は、大学の研究シーズや研究成果を活用していることが多く、いわゆる「大学発ベンチャー」の重要性が指摘されています。実際に経済産業省の調査によると、2019年度で2500社以上の「大学発ベンチャー」が活動しており、その数は年間200社以上のペースで増加しています。一方で、その成功例が諸外国に比べて少ないという分析もあり、「大学発ベンチャー」を取り巻く環境にはまだまだ多くの課題がありそうです。実際に多くの学生にとって、「ベンチャー」は少し遠い世界のハナシであるのかもしれません。また、教員や企業に勤める方々にとってもベンチャー起業というのはまだまだハードルが高く、さらに「ベンチャーマインドに溢れる学生(や社員)を育てろ」と言われても少し途方に暮れてしまうのが現状ではないでしょうか。

そこで、第35回さんわかセミナーでは、「ベンチャー立ち上げのリアル」と題しまして、実際にベンチャーを起業された方、「企業内ベンチャー」の起業をサポートしている方、さらに「ベンチャーマインド」に繋がる個人のモチベーションなどを「心理学」の側面から語っていただける方を講師としてお迎えし、実際にベンチャーを立ち上げるにあたって、どんなことが起こり、物心両面で何が必要なのかという「リアル」な部分について語っていただくセミナーを企画しました。この機会を通して、ベンチャーを自分でもできる(関われる)かもしれない「もう少し身近なもの」として捉え直していただく機会になればと思います。

コロナ禍に鑑み、今回のさんわかセミナーはウェビナー形式で開催します。セミナー参加費は無料で、日本農芸化学会会員ではない方の参加も歓迎しておりますので、ご興味のある皆様方の積極的なご参加をお待ちしております。

日時 2020年8月31日(月)
13:00~16:00
開催方法 Zoomウェビナー配信
講演者 高橋 祥子 氏(株式会社ジーンクエスト代表取締役)
石橋 良造 氏(日本ポジティブ心理学協会理事)
合田 ジョージ 氏(株式会社ゼロワンブースター共同代表)
澤⽥ 佳佑 氏 (株式会社ウィライツ 取締役)
プログラム

13:00 開会挨拶
13:05〜13:45 「パーソナルゲノム起業のリアル」
        高橋 祥子 氏(株式会社ジーンクエスト代表取締役)
13:55〜14:35 「ベンチャーにおけるウェルビーイング」
        石橋 良造 氏(日本ポジティブ心理学協会理事)
14:45〜15:35 「起業、社内起業におけるアクセラレーターの役割」
        合田 ジョージ 氏(株式会社ゼロワンブースター共同代表)
        澤⽥ 佳佑 氏 (株式会社ウィライツ 取締役)
15:35〜16:00 フリーディスカッション
16:00 閉会挨拶

参加申込 お申込みは下記のリンクからお願いいたします。
https://sanwaka-seminar35.peatix.com
※先着順で定員に達し次第、申込受付を締め切らせていただきますので、お早めにお申し込みください。
※お申込みいただいた個人情報は、参加確認および今後のさんわかセミナーご案内以外の目的には使用いたしません。
要旨集 要旨集(PDF)
パスワードは、参加の皆様へご連絡いたします。
参加費 無料
定員 100名 → 200名 ※ご好評につき定員増枠しました
問い合わせ先 日本農芸化学会 産学官若手交流会(さんわか)
E-mail (青字「E-mail」の部分をクリックしてください)