「農芸化学産学官学術交流の将来を考える」報告書
日本農芸化学会創立80周年記念・産学官若手勉強会「農芸化学産学官学術交流の将来を考える」報告書
2004年12月10日
日本農芸化学会 産学官若手交流会
本年11月26日(金)、27日(土)の二日間、産学官において中堅的立場で活躍される若手の人的交流を深めると共に若手の学術交流への意識の向上を目的として、静岡県熱海市(ホテル大野屋)にて標記勉強会を開催した。
本勉強会は本学会創立80周年の記念事業の一つ「産学官学術交流の更なる推進」を具体化すべく、本年度産学官学術交流委員会内に設置された産学官若手交流会(通称:さんわか会)が企画・開催した。企画にあたり、さんわか会メンバー17名が現在の産学官若手の交流の実態把握に努め、対策を協議した。その結果、産業発展と密接に関係した農芸化学における産学官交流の重要性を再認識する一方で、そうした産学官交流が少なくとも若手レベルにおいて不足している現状を問題視した。そして、その打開策として産学官若手が互いの組織の枠を越えて交流を深める本勉強会を企画するに至った。本勉強会では(1)産学官交流に関して様々な立場の先生を招いて、産学官交流のあり方や農芸化学の強みについて講演頂くと共に、(2)参加者全員により「産学連携の必要性とその課題」について泊まり込みで討論及びパネルディスカッションを行うことで、参加者が余裕を持って相互理解を深められるようなプログラムで臨んだ。以下に、本勉強会の内容及びその反響の要点を報告する。
参加者
大学や公的研究機関関係者が45名、企業関係者が35名。講演者7名を含め計87名に参加頂いた。農芸化学会員ばかりでなく農芸化学に関心をもつ方にも参加頂き、学会組織の枠を越えた交流の場となった。
講演会
産業発展に貢献する農芸化学の強みを再認識する話題に加え、公的機関で誕生した成果を産業発展に導くためのコーディネーションに関する話題、技術経営(MOT)研究の取り組み、官庁の取り組みなどについてご講演頂いた(詳細は講演会要旨参照)。講演後には質疑応答が盛んに行われ、講演内容に対する参加者の関心度の高さが伺えた。事後アンケートでは、「普段聞く機会の無い話題が多く、大変参考になった」との声が多数寄せられた(下記参照)。
討論会及びパネルディスカッション
産学官若手が相互理解を深めることを目的に、7名前後からなる小グループに分かれて、「どのような場面で産学官連携(交流)は必要と感じるか?」「産学官連携の現状と問題点はなにか?」「産学官連携の問題点の解決策」などのテーマについての討論を行った。また、翌日のパネルディスカッションでは、討論会において各グループの討論で抽出した話題について総合討論し、農芸化学の産学官交流に関する問題点の意識共有を図った。討論会においては、主催側の予想時間を越えて深夜まで熱い議論が繰り広げられた。「組織の枠を越えて相互理解を深めることが出来、有意義であった」との声が多数寄せられた(下記参照)。
参加者からの反響
事後アンケートにおいて、回答者(60名)の8割以上から本勉強会の参加に"満足した"との回答があった。また、上記の通り、本勉強会における産学官若手交流が有意義であったとの感想が多数寄せられた。以下にアンケートで寄せられた感想を抜粋する。
講演会について
「多くの興味深いテーマ、企業の成果の講演、MOTの講演、いずれもよかった。」「ふだんとは異なる視点からの講演だったのでとても面白くきかせてもらえました。」「山田先生の「mutual respect」は至言だと思う。結果として、お互いの人と人との信頼関係が大切だと思った。産学交流を型にはめて考えるべきではないと思う。」
討論会について
「満足のいく結論が得られたどうかはさておき、顔をつき合わせて議論できたのは良かった。」「異業種の方や大学の方とざっくばらんに話ができ、とても良かった。こういう交流から連携は始まるのだと思う。」「活発な話し合いができ、それぞれの言い分が聞けた。しかしながら、産学官の参加者はみな研究員であり、実際に連携を決めることのできる管理職などの人との交流も必要だと思われる。」
今後の企画について
「今回のグループ討論のような交流会を継続して欲しい。産学官の人と人とのつながりを重視した企画を続けて欲しい。」「「産学連携」というテーマに関わらず人と人とのネットワークを作っていくイベントが豊富になればよいと思います。」「先ずはこのような会を続けて、産学官連携に関する問題点の抽出、それに対する討論を行っていくことが大切だと思う。」「学会大会のポスターで連携を目指す研究分野を作ってはどうか?」「企業がどのようなシーズを求めているのか紹介するようなセミナーを企画する。」「企業とタイアップして申請するタイプの30~50万くらいの「安い」若手用のグラント(例えば、NEDO)があればよい。やはり産学連携は一対一の人間関係が大切だと思うので萌芽的なプランを「共同研究」にすることで、お互いの信頼関係をつくるFirst Stepになればよい。学会などで意気投合して「『NEDO小型』出しますか」と気軽に言い合えるようなものがよい。」「お互いの交流をもっと深めるために、各自の簡単なポスターを作成し、酒を飲みながらディスカッションできるような場があれば、自分のことをアピールできるし、良いのではないだろうか?」
尚、本勉強会の討論会、パネルディスカッション及びアンケートで出た参加者の声に関する詳細は本学会HPに掲載し、参加者や産学官交流に関心を持つ方々に紹介し、産学官交流に関する問題について意識共有を図る予定である。