2019年度産学官学術交流フォーラム
報告
2019年3月26日(火)、2019年度産学官学術交流フォーラムを東京農業大学世田谷キャンパス 1号館1階142教室で開催しました。
フォーラムの第1部では農芸化学研究企画賞の受賞者8名による研究発表会、第2部では産学官で活躍される4名の先生方をお招きしてシンポジウムを行いました。第1部、第2部合計で約300名とたくさんの方々にご参加いただきました。フォーラムにご参加いただいた皆様に厚く御礼を申し上げます。
[第1部 農芸化学研究企画賞発表会]
はじめに、日本農芸化学会の松山旭副会長から開会の挨拶、および農芸化学研究企画賞の趣旨について説明していただきました。続いて、本年度採択された研究企画賞(第16回農芸化学研究企画賞)の研究内容について、3名の受賞者にご講演いただきました。いずれもこれまでにない斬新な研究企画であり、今後の進展が楽しみな内容でした。
- 「青枯病菌クオラムセンシング機構を標的にしたトマト萎凋病の予防・治療薬の開発」
甲斐 建次(大阪府立大学大学院・生命環境科学研究科) - 「環境調和型プロセスにより脱脂米糠から回収・精製された完全アレルゲンフリータンパク質及び機能性リン化合物の機能性食品原材料としての用途開発・市場導入に関する研究」
渡辺 昌規(山形大学・農学部) - 「微生物の低栄養性に必須なアルデヒド脱水素酵素の工学的利用」
吉田 信行(静岡大学大学院・総合科学技術研究科)
ついで、第15回農芸化学研究企画賞受賞者による中間報告が行われました。2演題とも昨年から研究が進み、実用化が期待できる内容となっていました。
- 「筋分化を誘導する乳酸菌オリゴDNAの生体内作用の実証」
高谷 智英(信州大学・農学部) - 「セルロースナノファイバー生産のための温泉微生物生態系エンジニアリング」
春田 伸(首都大学東京・理工学研究科)
最後に、第14回農芸化学研究企画賞受賞者による最終報告が行われました。いずれの研究も2年間で大きく発展しており、これらの研究成果が産業利用される日も近いのではと感じさせる内容でした。
- 「消化汚泥を基質とした水素発酵に関するバイオテクノロジー基盤研究」
藤井 克彦(山口大学・創成科学研究科) - 「"ホモキラルポリ-γ-グルタミン酸"生合成装置の分子解析と微生物工学利用」
芦内 誠(高知大学・農林海洋科学部) - 「ゲノム編集による果実成熟制御の解明と高品質果実の作出」
伊藤 康博(農研機構・食品研究部門)
第1部終了後の休憩時間に、第15、14回研究企画賞受賞者によるポスター発表を行いました。口頭発表では聞けなかった研究の詳細について、活発な議論が交わされていました。
[第2部 シンポジウム「2020年以降を目指した新しい価値の創造と産学官連携」]
平成の終わりが近づき、遠い未来に感じた2020年も目前となった今、農芸化学に近い領域で大活躍されている産官のシンポジストからポスト2020年に向けた研究開発ビジョンを語っていただきました。
- 「バイオ×デジタルの融合で切り拓くバイオエコノミーの新しい時代」
第2部の最初は、経済産業省の上村課長より、バイオテクノロジーが貢献する市場(産業群)を意味する"バイオエコノミー"についてご講演いただきました。2030年には巨大な市場となっていることが見込まれるバイオエコノミーですが、目指すべきサステナブルなバイオエコノミー実現に向けて、経済産業省として推進されている取り組み事例と今後の戦略についてご紹介いただきました。また、最後には産学官連携を進めるためのポイントについてお話しいただきました。
- 「新価値創造に向けたバイオ技術戦略について」
味の素株式会社の吉良研究所長には、うま味調味料から始まった味の素グループのバイオ技術開発の歴史について実体験を交えながらご紹介いただき、加えて今後のバイオ技術戦略の展望やオープン&リンクイノベーションの推進についてもお話しいただきました。さらに最後には、若手の研究者に向けたメッセージをいただき、想いにあふれたご講演となりました。
- 「日本水産株式会社の養殖事業の高度化への取組み」
日本水産株式会社の山下研究所長からは、養殖の基本的なお話から、これまで日本水産で取り組まれたエビの陸上養殖やブリの成熟期コントロール、といった技術開発について、また現在進められている異業種との取り組みまでをご紹介いただきました。普段口にするものでありながらあまり知られていない養殖技術ですが、ここまで高度化されてきているのかと驚きの多いご講演でした。
- 「Society 5.0実現のための食によるヘルスケア産業の創出」
最後のご講演は農研機構の山本センター長より、サイバー空間とフィジカル空間の融合を目指すSociety 5.0の概要についてご説明いただき、さらにSociety 5.0の中で実現する新たな食によるヘルスケア産業創出に関するコンセプトや具体的事例、産学官の連携についてご紹介いただきました。参加者の関心も大きかったようで、質疑では非常に活発な議論が行われていました。
第2部の最後は、国立健康・栄養研究所の阿部所長の挨拶にて締め括りとなりました。
[第3部 技術交流会]
技術交流会は、会場を多目的ホールへと移し、ご聴講いただいた方々や演者の先生方もご参加いただき様々な意見交換をさせていただきました。
本フォーラムの開催を持ちまして、さんわか8期の活動は終了し、9期の活動へと引き継がれることになります。2年間さんわか8期の活動にご参加、ご協力いただいた皆様に改めて感謝を申し上げます。8期では第29回から第33回までの5回のさんわかセミナーと2回の産学官学術交流フォーラムの企画を行いました。いずれの会の企画会議においても、8期のメンバーで活発に議論を交わしてまいりました。その結果、農芸化学分野にとどまらず、AIやバイオセンシングなど幅広い分野のセミナーを開催してきました。これらの活動が新たな産学官連携の芽となることを願っております。また、私たち自身も8期の活動を通して多くのことを学ばせていただきました。半分のメンバーが今期でさんわかからは引退をしますが、今後もここで得られた経験を生かし、農芸化学ひいては日本の科学の発展に貢献できるよう努めたいと思っております。9期の活動にもご協力・ご参加いただけますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
概要
2019年度産学官学術交流フォーラムを下記の要領で開催いたします。
第1部は農芸化学研究企画賞発表会を開催します。第16回受賞者の研究企画発表、第15回受賞者の中間報告、第14回受賞者の最終報告とポスターディスカッションを行います。
第2部はシンポジウムを開催します。本年度は「2020年以降を目指した新しい価値の創造と産学官連携」と題し、農芸化学に近い分野で大活躍されている産官のシンポジストからポスト2020年に向けた研究開発ビジョンを語っていただきます。
第3部は技術交流会を開催します。シンポジストの方々と参加者の皆様が相互交流を図る機会を提供いたします。
奮ってご参加いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。
日時 | 2019年3月26日(火)13:30~ (日本農芸化学会2019年度大会3日目) |
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会場 | 東京農業大学 世田谷キャンパス 1号館1階142教室(第1部・第2部)、1号館6階多目的ホール(第3部) |
主催 | 日本農芸化学会「産学官学術交流委員会」 |
企画 | 日本農芸化学会「産学官若手交流会(さんわか)」 |
参加費 | 無料 |
プログラム | ■第1部 農芸化学研究企画賞発表会
第16回農芸化学研究企画賞受賞者による研究企画発表会
第15回農芸化学研究企画賞受賞者による中間報告会
第14回農芸化学研究企画賞受賞者による最終報告会
ポスターディスカッション&休憩
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■第2部 シンポジウム「2020年以降を目指した新しい価値の創造と産学官連携」
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■第3部 技術交流会 18:10~(会場:1号館6階多目的ホール) |
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問い合わせ先 | 日本農芸化学会 産学官若手交流会(さんわか) |
※詳細は決定次第順次更新していきます。