報告

2017年3月19日(日)、日本農芸化学会2017年度大会において、2017年度産学官学術交流フォーラムを京都女子大学Q校舎で開催しました。

第1部では農芸化学研究企画賞の発表会、第2部ではシンポジウムを行いました。第1部、2部を通じて338名と非常に多くの方々にご参加頂き、本イベントに関する関心の高さが伺われました。

会場の都合上、立ち見の方や、会場に入れなかった方々も多くいらっしゃいました。大変ご迷惑お掛けしましたこと、この場を借りてお詫び申し上げます。

以下、各イベントについて簡単にご報告いたします。

【第1部 農芸化学研究企画賞発表会】
はじめに産学官学術交流委員会 三輪委員長より挨拶があった後、第14回農芸化学研究企画賞受賞者による研究企画発表会がありました。今回採択された研究提案は以下の3件でした。いずれの講演も産業的にも学術的にも興味深く、今後の展開が楽しみな内容でした。

  • ゲノム編集による果実成熟制御の解明と高品質果実の作出
  • “ホモキラルポリ-γ-グルタミン酸”生合成装置の分子解析と微生物工学利用
  • 消化汚泥を基質とした水素発酵に関するバイオテクノロジー基盤研究

次いで、第13回農芸化学研究企画賞受賞者による中間報告会が行われました。冒頭に座長からのプレッシャーがあったものの、3題とも「1年でここまで来たか!」との高評価が得られる成果発表となっておりました。

  • 非侵襲的薬剤投与法を可能にする上皮タイトジャンクション可逆的開口剤の開発
  • 食後高血糖改善成分を含む新規食材の活用に関する研究
  • 廃棄ゴムの再資源化を目指したゴム処理技術の革新

続いて、第12回農芸化学研究企画賞受賞者による最終報告会が行われました。企画賞発表会では最終報告となりましたが、発表者からは、今後も研究を継続して結果を本大会で発表していきたいとの意気込みが語られました。

  • ゼブラフィッシュの受精卵感染モデル系を利用した抗感染症薬シーズの探索
  • 微生物発酵法による植物アルカロイド生産と生薬生理活性物質の創製

【第2部 シンポジウム】
「トップランナーが語る研究開発ビジョン~未来価値の創造~」と題し、農芸化学に近い分野で大活躍されている5名の企業トップ経営者の方々から、次世代の研究開発ビジョンを語って頂きました。

  • “やってみなはれ精神”での新規事業創出への挑戦
    サントリーホールディングス 辻村専務にご登壇頂き、同社における新規事業、新規カテゴリー創出の事例紹介と、R&Dを成功に導くためのポイントについてご講演頂きました。
  • タカラバイオの事業戦略
    タカラバイオ 仲尾社長からは、会社発足の経緯から今後の事業展開までご紹介いただき、「バイオ産業のイノベーションは農芸化学会こそが担える」との力強いお言葉を頂きました。
  • 2030年を想定したバイオ産業の社会貢献ビジョン
    日本バイオ産業人会議(JABEX)荒蒔世話人代表より、Kirin-Amgen社設立の際に、Amgen社のベンチャー的なスピリッツに影響を受けたご経験についてご講演頂きました。 また、JABEX 坂元事務局次長からは、海外のバイオ産業動向についてご紹介頂き、いかに日本と世界との間に差がついているかを認識させられるご講演となりました。
  • 『酒(しゅ)を科学する』月桂冠の研究開発について
    月桂冠 秦常務からは、同社の100年以上にわたる研究開発の歴史の中で取り組んできた事例と、企業研究所として顧客価値を創出するために必要な「コト」についてご紹介頂きました。

第2部の最後は急遽、日本農芸化学会 植田会長の挨拶にて締め括りとなりました。

【第3部 技術交流会】
場所をA校舎食堂に移し、大会ミキサーと合同で、農芸化学研究企画賞・大会トピックス演題ポスターセッションが行われました。こちらも会場から参加者が溢れる程の盛況となり、本大会・企画賞発表会ではできなかった深い議論が行われました。さらに、第2部のシンポジストにもご参加いただくことができ、まさに産学官交流の名にふさわしく幅広い参加者同士の活発な交流が行われました。

ご多忙の折、ご講演を引き受けてくださいましたシンポジストの皆様、発表者の先生方、ならびにご参加いただきました多くの皆様に改めて御礼申し上げます。

本フォーラムが、更なる産学官交流の促進に寄与し、農芸化学分野における研究・事業化の発展に帰することを願います。

2017年度産学官学術交流フォーラム-1 2017年度産学官学術交流フォーラム-2

2017年度産学官学術交流フォーラム-3 2017年度産学官学術交流フォーラム-4

なお、第7期のさんわかは本フォーラムが最後の活動となりました。これまでご協力いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。4月より活動を第8期に引き継ぎ、更なる産学官交流の推進を目指し活動を続けて参ります。今後とも、さんわかの活動にご協力・ご参加いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

2017年度産学官学術交流フォーラム-3

概要

日時 2017年3月19日(日)13時50分開始
(日本農芸化学会2017年度大会3日目)
会場 京都女子大学 Q35会場(Q校舎3階301):第1部・第2部、A校舎地下1階 食堂:第3部
主催 日本農芸化学会「産学官学術交流委員会」
企画 日本農芸化学会「産学官若手交流会(さんわか)」
ポスター 2017年度産学館学術交流委員会フォーラム(PDF)
プログラム 第1部 農芸化学研究企画賞発表会 13:50~15:04 (会場:Q35会場(Q校舎3階301))
  • 第14回農芸化学研究企画賞受賞者による研究企画発表会
  • 第13回農芸化学研究企画賞受賞者による中間報告会
  • 第12回農芸化学研究企画賞受賞者による最終報告会

第2部 シンポジウム「トップランナーが語る研究開発ビジョン ~未来価値の創造~」 15:15~18:20 (会場:Q校舎 Q301)
  • 辻村 英雄 氏(サントリーホールディングス株式会社・専務取締役、サントリービジネスエキスパート株式会社・代表取締役社長)
  • 仲尾 功一 氏(宝ホールディングス株式会社・取締役、タカラバイオ株式会社・代表取締役社長)
  • 荒蒔 康一郎 氏(日本バイオ産業人会議・世話人代表、公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会・会長、元キリンホールディングス株式会社代表取締役会長)
  • 秦 洋二 氏(月桂冠株式会社・常務取締役 兼 総合研究所長)

第3部 技術交流会 18:30~ (会場:A校舎 学生食堂)
  • 農芸化学研究企画賞および大会トピックス賞候補のポスター展示
※第3部 技術交流会は日本農芸化学会2017年度大会ミキサーとの合同開催となります。

※詳細は決定次第順次更新していきます。
プログラム 第1部 農芸化学研究企画賞発表会 13:50~15:04 Q35会場(Q校舎3階301)
  • 13:50~13:55
    「農芸化学研究企画賞」 
    三輪 清志(産学官学術交流委員会委員長)

    本賞は、農芸化学分野における斬新な研究企画を会員から広く募集し、本賞の趣旨に賛同した企業からの寄付金を、産学官学術交流委員会が選出した研究者に副賞として贈呈することにより、学術研究の産業化促進や農芸化学のさらなる発展をめざそうというものです。

    従来のような研究成果に対する賞ではなく、農芸化学分野における新たな産業の育成をめざして、農芸化学の特徴を活かした重点研究領域から優秀なテーマ提案者を顕彰し、もって研究成果の早期創出とその産業化を支援することで、農芸化学における産業界と学・官界の連携強化への寄与をめざすことを目的としております。
     
第14回農芸化学研究企画賞受賞者による研究企画発表会
座長:三輪 清志(産学官学術交流委員会委員長)
  • 13:55~14:00(発表5分)
    「ゲノム編集による果実成熟制御の解明と高品質果実の作出」 
    伊藤 康博((国研)農業・食品産業技術総合研究機構・食品研究部門)
  • 14:00~14:05(発表5分)
    「“ホモキラルポリ-γ-グルタミン酸”生合成装置の分子解析と微生物工学利用」 
    芦内 誠(高知大学・農林海洋科学部)
  • 14:05~14:10(発表5分)
    「消化汚泥を基質とした水素発酵に関するバイオテクノロジー基盤研究」 
    藤井 克彦(山口大学・創成科学研究科)

第13回農芸化学研究企画賞受賞者による中間報告会
座長:五味 恵子(キッコーマン(株))
  • 14:10~14:20(発表8分、質疑応答2分)
    「非侵襲的薬剤投与法を可能にする上皮タイトジャンクション可逆的開口剤の開発」 
    臼井 健郎(筑波大学・生命環境系)
  • 14:20~14:30(発表8分、質疑応答2分)
    「食後高血糖改善成分を含む新規食材の活用に関する研究」 
    仲川 清隆(東北大学・大学院農学研究科)
  • 14:30~14:40(発表8分、質疑応答2分)
    「廃棄ゴムの再資源化を目指したゴム処理技術の革新」 
    笠井 大輔(長岡技術科学大学・工学部)

第12回農芸化学研究企画賞受賞者による最終報告会
座長:土屋 陽一(サッポロホールディングス(株))
  • 14:40~14:52(発表10分、質疑応答2分)
    「ゼブラフィッシュの受精卵感染モデル系を利用した抗感染症薬シーズの探索」 
    浅見 行弘(北里大学・大学院感染制御科学府)
  • 14:52~15:04(発表10分、質疑応答2分)
    「微生物発酵法による植物アルカロイド生産と生薬生理活性物質の創製」 
    南 博道(石川県立大学・生物資源工学研究所)

<休憩>15:04~15:15
第2部 シンポジウム
「トップランナーが語る研究開発ビジョン ~未来価値の創造~」 
15:15~18:20 Q35会場(Q校舎3階301)

企業のトップクラスは何を考えて、どういう研究開発マネジメントをしているのか?成功のきっかけは何だったのか。農芸化学に近い分野で、大活躍されている企業のトップから次世代の研究開発ビジョンを語っていただきます。

座長:八十原 良彦((株)カネカ)
  • 15:15~16:00(45分)
    「“やってみなはれ精神”での新規事業創出への挑戦」
    辻村 英雄(サントリーホールディングス株式会社・専務取締役、サントリービジネスエキスパート株式会社・代表取締役社長)
  • 16:00~16:45(45分)
    「タカラバイオの事業戦略」
    仲尾 功一(タカラバイオ株式会社・代表取締役社長、宝ホールディングス株式会社・取締役)

<休憩>16:45~16:55

座長:小川 順(京都大)
  • 16:55~17:35(40分)
    「2030年を想定したバイオ産業の社会貢献ビジョン」
    荒蒔 康一郎(日本バイオ産業人会議・世話人代表)
    坂元 雄二 (日本バイオ産業人会議・事務局次長)
  • 17:35~18:15(40分)
    「『酒(しゅ)を科学する』月桂冠の研究開発について」
    秦 洋二(月桂冠株式会社・常務取締役 兼 総合研究所長)
  • 18:15~18:20
    総合討論
第3部 技術交流会 18:30~ A校舎地下1階 食堂
農芸化学研究企画賞および大会トピックス演題のポスター展示
※第3部 技術交流会は日本農芸化学会2017年度大会ミキサーとの合同開催となります。
(大会参加登録が必要です)