報告

2016年3月29日(火)、日本農芸化学会2016年度大会において、2016年度産学官学術交流フォーラムを札幌コンベンションセンター特別会議場で開催しました。第1部では農芸化学企画賞の発表会、第2部ではシンポジウムを行いました。事前の広報活動の効果もあり延べ人数で385名と非常に多くの方にご出席いただき、本イベントに関する関心の高さがうかがわれました。以下、各イベントについて簡単に報告いたします。

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写真1 三輪委員長の開会の挨拶                写真2 農芸化学研究企画賞発表会

第1部 農芸化学研究企画賞発表会の開会に先立ち、産学官学術交流委員会の三輪清志より開会の挨拶がありました。
まず、第13回農芸化学研究企画賞受賞者による研究企画発表会があり、今回採択された3件の研究提案の説明がありました。以下、発表順に講演タイトルと演者を記します。
「非侵襲的薬剤投与法を可能にする上皮タイトジャンクション可逆的開口剤の開発」臼井 健郎 氏(筑波大学・生命環境系)
「食後高血糖改善成分を含む新規食材の活用に関する研究」仲川 清隆 氏(東北大学・大学院農学研究科)
「廃棄ゴムの再資源化を目指したゴム処理技術の革新」笠井 大輔 氏(長岡技術科学大学・工学部)
いずれの講演も産業的にも学術的にも興味深く、今後の展開が楽しみな内容でした。
次いで、第12回農芸化学研究企画賞受賞者による中間報告会が行われました。
「ゼブラフィッシュの受精卵感染モデル系を利用した抗感染症薬シーズの探索」浅見 行弘 氏(北里大学・大学院感染制御科学府)
「微生物発酵法による植物アルカロイド生産と生薬生理活性物質の創製」南 博道 氏(石川県立大学・生物資源工学研究所)
第11回農芸化学研究企画賞受賞者による最終報告会が行われました。
「放線菌二次代謝物の生産を増強する小分子バイオメディエーターの開発」高橋 俊二 氏(理化学研究所・環境資源科学研究センター)
「生食用赤果肉リンゴ原因遺伝子の機能解析と育種の効率化」松本 省吾 氏(名古屋大学・大学院生命農学研究科)
「巨大褐藻類を原料とする有用バルクケミカル発酵生産技術の開発」河井 重幸 氏(京都大学・大学院農学研究科)
研究企画賞報告会終了後、第11、12回の研究企画賞受賞者によるポスターセッションを特別会議場ホワイエにて行いました。限られた時間ながら、ポスターセッションでは熱のこもった討論が行われました。

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写真3 ポスター発表の様子                              写真4 シンポジウムの様子

議論を尽くすには十分な時間がなく、やや残念ではありましたが、ここでの討論の成果が研究の急速な進捗につながることが期待されます。また、アンケートでは、企画賞の研究は今後実用化の可能性の期待が大きい等のコメントもあり、実学としての農芸化学の有り様についても実感できる発表会となりました。

第2部のシンポジウムでは、「地方創生!!表示制度を活かせるか?産学官連携で探る地域食品の未来」として4名の先生方に講演を行っていただきました。
田村 耕志 氏(北海道庁・食関連産業室)による「北海道食品機能性表示制度(ヘルシーDo(ドゥ))について~北海道からの挑戦~」のご講演では、ヘルシーDo制度の説明からその制度の活用に向けた取り組みについての紹介がありました。
佐川 泰隆 氏(北海道フード特区機構・事務局)による「北海道フード・コンプレックス国際戦略総合特区の取り組み」のご講演では、北海道の強みを生かした食産業の戦略についての紹介がありました。
綾部 時芳 氏(北海道大学・大学院先端生命科学研究院)による「腸から見れば! 食品と免疫と腸内細菌がつくる“腸内環境”の解明と実用化」のご講演では、最近話題の腸内環境についての研究の最前線のご紹介がありました。    

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                写真5 会場の様子                                            写真6 パネルディスカッションの様子  

西平 順 氏(北海道情報大学・医療情報学部)による「住民参加型の食の臨床試験システム『江別モデル』」のご講演では、北海道情報大学が取り組んでいる食の臨床試験システムについてのご紹介がありました。いずれの講演も参加者から「非常に興味深かったと」好意的なご意見を多数いただきました。
全てのご講演の終了後、日経バイオテク シニアエディターの河田孝雄 氏を進行役、パネリストとして上記4名と産学官学術交流委員会から中村剛が参加してパネルディスカッションが行われました。現状行われていることと、今後の課題を模索しながらパネルディスカッションは進行し、北海道という地域のメリットデメリットを明確にし、他の地域の食産業振興に役立つ知見やアイディアが多く提示されました。
また、本大会ミキサーに合わせて行われた技術交流会では、フォーラム参加者だけにとどまらず、様々な研究者同士の交流が行われ、年会同時開催にふさわしいレベルの産官学交流が行われました。今後、農芸化学会発の産学官共同研究が生まれることを期待しています。

概要

日時 2016年3月29日(火)13時15分開始
(日本農芸化学会2016年度大会3日目)
会場 札幌コンベンションセンター 会場:A(特別会議場、1F)
主催 日本農芸化学会「産学官学術交流委員会」
企画 日本農芸化学会「産学官若手交流会(さんわか)」
プログラム 第1部 農芸化学研究企画賞発表会(13:15~14:45)
  • 13:15~13:20
    「農芸化学研究企画賞」 
    三輪 清志 (産学官学術交流委員会委員長)

    本賞は、農芸化学分野における斬新な研究企画を会員から広く募集し、本賞の趣旨に賛同した企業からの寄付金を、産学官学術交流委員会が選出した研究者に副賞として贈呈することにより、学術研究の産業化促進や農芸化学のさらなる発展をめざそうというものです。

    従来のような研究成果に対する賞ではなく、農芸化学分野における新たな産業の育成をめざして、農芸化学の特徴を活かした重点研究領域から優秀なテーマ提案者を顕彰し、もって研究成果の早期創出とその産業化を支援することで、農芸化学における産業界と学・官界の連携強化への寄与をめざすことを目的としております。
     
第13回農芸化学研究企画賞受賞者による研究企画発表会
  • 13:20~13:25
    「非侵襲的薬剤投与法を可能にする上皮タイトジャンクション可逆的開口剤の開発」 
    臼井 健郎 氏(筑波大学・生命環境系)
  • 13:25~13:30
    「食後高血糖改善成分を含む新規食材の活用に関する研究」 
    仲川 清隆 氏(東北大学・大学院農学研究科)
  • 13:30~13:35
    「廃棄ゴムの再資源化を目指したゴム処理技術の革新」 
    笠井 大輔 氏(長岡技術科学大学・工学部)
     
第12回農芸化学研究企画賞受賞者による中間報告会
  • 13:35~13:40
    「ゼブラフィッシュの受精卵感染モデル系を利用した抗感染症薬シーズの探索」 
    浅見 行弘 氏(北里大学・大学院感染制御科学府)
  • 13:40~13:45
    「微生物発酵法による植物アルカロイド生産と生薬生理活性物質の創製」 
    南 博道 氏(石川県立大学・生物資源工学研究所)
     
第11回農芸化学研究企画賞受賞者による最終報告会
  • 13:45~13:55
    「放線菌二次代謝物の生産を増強する小分子バイオメディエーターの開発」 
    高橋 俊二 氏(理化学研究所・環境資源科学研究センター)
  • 13:55~14:05
    「生食用赤果肉リンゴ原因遺伝子の機能解析と育種の効率化」 
    松本 省吾 氏(名古屋大学・大学院生命農学研究科)
  • 14:05~14:15
    「巨大褐藻類を原料とする有用バルクケミカル発酵生産技術の開発」 
    河井 重幸 氏(京都大学・大学院農学研究科)
     
ポスターディスカッション&休憩
  • 14:15~14:45
    ホワイエにて研究企画賞中間報告および最終報告のポスターディスカッションを開催いたします。
第2部 シンポジウム「地方創生!!表示制度を活かせるか?産学官連携で探る地域食品の未来」(14:45~17:40)

2015年度から「機能性表示食品制度」や「地理的表示保護制度」が始まり食品関係者の注目を集めておりますが、北海道では2013年度より、「北海道食品機能性表示制度」をスタートさせています。本シンポジウムでは、北海道フード・コンプレックス国際戦略総合特区の設置など、先端的な取り組みに挑む北海道の食品研究の最前線についてご講演をいただきます。最後には、パネルディスカッションにより、地方創生に向けた産学官連携による地域食品研究の展開について意見交換を行います。
 
  • 14:45~15:15
    「北海道食品機能性表示制度(ヘルシーDo(ドゥ))について~北海道からの挑戦~」 
    田村 耕志 氏(北海道庁・食関連産業室)
  • 15:15~15:45
    「北海道フード・コンプレックス国際戦略総合特区の取り組み」
    佐川 泰隆 氏(北海道フード特区機構・事務局)
  • <休憩>
  • 15:50~16:30
    「腸から見れば! 食品と免疫と腸内細菌がつくる“腸内環境”の解明と実用化」
    綾部 時芳 氏(北海道大学・大学院先端生命科学研究院)
  • 16:30~17:10
    「住民参加型の食の臨床試験システム『江別モデル』」
    西平 順 氏(北海道情報大学・医療情報学部)
  • 17:10~17:40
    パネルディスカッション
    進行役:河田 孝雄 氏(日経バイオテク シニアエディター)
    パネリスト:上記シンポジストほか
第3部 技術交流会(札幌コンベンションセンター 会場:D)
17:45~
※日本農芸化学会2016年度大会ミキサーとの合同開催となります。
(大会参加登録が必要です)