報告

去る2015年3月28日に日本農芸化学会2015年大会にて産学官学術交流委員会フォーラムを岡山大学津島キャンパス創立50周年記念館金光ホールにて産学官学術交流委員会と合同で開催しました。

第1部では、「第12回農芸化学研究企画賞受賞者研究企画発表会」として産学官学術交流委員会の三輪委員長の挨拶に続いて2名の先生方に講演を行って頂きました。抗感染症薬や生薬生理活性物質生産といういずれも産業に直結する研究で、今後の展開が楽しみな内容でした。さらに「第10回農芸化学研究企画賞受賞者最終報告会」として3名の先生方にそれぞれ講演を行って頂きました。機能性ペプチドの評価、メタン発酵プロセスの構築、廃棄ミカンの高度利用と、いずれの講演も産業利用という出口が明確な研究内容で、“これぞ農芸化学の真骨頂”という大変興味深いものでした。

第2部では、「第11回農芸化学研究企画賞中間報告会」として3名の先生方に講演を行って頂きました。放線菌二次代謝物生産、赤果肉リンゴ育種、海洋バイオマスからの物質生産と、いずれも非常に魅力的な研究で今後の発展がますます期待できるような内容でした。

第3部では、ポスターディスカッションと称して創立50周年記念館1階交流サロンにて第2部に引き続き第11回農芸化学研究企画賞中間報告を開催しました。また、今回は初の試みとして大会実行委員会との共催で大会トピックス演題のポスター発表も同時開催致しました。120名もの多くの方々に参加して頂き、至る所で活発な議論が行われ、サロンは終始その熱気に包まれておりました。

第4部では「世界に挑む!日本発バイオベンチャー!!」と冠したシンポジウムを開催しました。スパイバー株式会社 森田啓介氏からは微生物発酵生産によるクモの糸の量産化、株式会社ジナリス 西達也氏からは廃棄プラスチックからのポリフェノール類の大量生産、そして東京大学 菅裕明氏からはin vitroでの特殊ペプチドライブリー構築及びそのスクリーニングを用いた全く新しいペプチド創薬技術についてそれぞれ話題を提供して頂きました。どの講演も未来を切り拓く力強さに溢れた内容で、そのドラマティックな展開に会場中誰もが魅了されていました。実学としての農芸化学のあり方を我々に改めて問い直す一つの契機になったのではないかと思います。

そして第5部は会場を南福利施設(ピーチユニオン)に移し、ミキサーとの共催の形で技術交流会を開催しました。会場では一般、学生を問わず沢山の参加者で溢れ、アットホームな雰囲気の中で交流が行われました。

今回のフォーラムの参加者数は約250名でした。「トピックス賞のアナウンスが少ないので、一度に見られるのはありがたかった」、「第3部、ポスターは深いディスカッションできるのが良い」、「第4部、生のベンチャーの話は面白かった」、「第4部、今までに聞いたことが無いような発想を聞くことが出来て良い刺激になりました」「場所、会場が大変良く、落ち着いた中で講演を聞くことができました」、などといった本フォーラムに関して好意的なご意見を多数頂きました。本フォーラムを開催するにあたり、大会関係者をはじめ、様々な形でご支援頂いた多くの方々に改めて御礼申し上げます。また、「非常に面白い内容であるにもかかわらず、参加者が少ない。大会プログラムの内容を改善するなどもっと宣伝が必要ではないでしょうか」、「参加者が少なくてもったいない」、「大会前に事前に要旨が見られると聴きたいと思います」といったご意見も頂きました。本フォーラムが皆様にもっと周知されるよう、さらなる改善をしていきたいと思います。

また2016年度大会でもフォーラムを開催しますのでぜひ皆様ご参加ください。

*要旨集が必要な方は、さんわかトップページのE-Mail(こちら)にご連絡いただければ対応いたします。

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概要

主催 日本農芸化学会「産学官学術交流委員会」、「産学官若手交流会(通称:さんわか)」
日時 2015年3月28日(土)13時30分開始
会場 岡山大学 津島キャンパス 創立50周年記念館1階金光ホール・交流サロンおよび南福利施設(ピーチユニオン)
ポスター 2015年度産学館学術交流委員会フォーラム(PDF)
プログラム 第1部 第12回農芸化学研究企画賞受賞者研究企画発表会(創立50周年記念館1階金光ホール)
  • 13:30~13:35
    「農芸化学研究企画賞とは」 三輪 清志 氏(産学官学術交流委員会委員長)
  • 13:35~13:40
    「ゼブラフィッシュの受精卵感染モデル系を利用した抗感染症薬シーズの探索」 浅見 行弘 氏(北里大学・大学院感染制御科学府)
  • 13:40~13:45
    「微生物発酵法による植物アルカロイド生産と生薬生理活性物質の創製」 南 博道 氏(石川県立大学・生物資源工学研究所)

第10回農芸化学研究企画賞受賞者最終報告会(創立50周年記念館1階金光ホール)
  • 13:45~14:00
    「高機能食品成分を用いた脳老化の予防と改善に関する研究」 久恒 辰博 氏(東京大学・大学院新領域創成科学研究科)
  • 14:00~14:15
    「メタン発酵プロセスに用いる高熱性細菌の探索と応用」 中島 琢自 氏(北里大学・感染制御研究機構)
  • 14:15~14:30
    「ヘスぺリジンの機能性に注目したかんきつ類の高度利用と地域活性化」  田丸 靜香 氏(長崎県立大学・看護栄養学部)
第2部 第11回農芸化学研究企画賞中間報告会(創立50周年記念館1階金光ホール)

14:40~15:00
※第3部で引き続きポスターディスカッションを行います。
  • 「放線菌二次代謝物の生産を増強する小分子バイオメディエーターの開発」 高橋 俊二 氏((独)理化学研究所・環境資源科学研究センター)
  • 「生食用赤果肉リンゴ原因遺伝子の機能解析と育種の効率化」 松本 省吾 氏(名古屋大学・大学院生命農学研究科)
  • 「巨大褐藻類を原料とする有用バルクケミカル発酵生産技術の開発」 河井 重幸 氏(京都大学・大学院農学研究科)
第3部 ポスターディスカッション(創立50周年記念館1階交流サロン)

15:00~16:00
今年度は、第2部に引き続き第11回農芸化学研究企画賞中間報告と、初の試みとして大会トピックス演題のポスター発表(大会実行委員会との共催)を行います。幅広い研究者、特に若手研究者が自由に意見交換できる場を設けたいと考えています。
第4部 シンポジウム「世界に挑む!日本発バイオベンチャー!!」(創立50周年記念館1階金光ホール)

「農芸化学」は、実学として発展してきた学問です。しかしながら、数多くの研究が行われている一方で製品化、実用化にまで辿り着く研究はごく一部に限られています。このため、実学としての農芸化学の真のあり方が今問われています。本シンポジウムでは、近年注目を集めているバイオベンチャーを牽引する先生方に、これまでの研究、開発事例と将来の展望をご紹介頂きます。

16:00~18:15
  • 「“QMONOS”実用化への挑戦」 森田 啓介 氏(スパイバー株式会社)
  • 「ポリフェノールで環境と健康を守る!」 西 達也 氏(株式会社ジナリス)
  • 「非古典的特殊ペプチド創薬とイノベーション」 菅 裕明 氏(東京大学・大学院理学系研究科)
第5部 技術交流会(南福利施設(ピーチユニオン))

18:30~20:00
※第5部はミキサーと合同開催となっております。皆様奮ってご参加ください。