第13回 被災地理科教育支援 出前授業・出前実験
概要
日時 | 2013年7月16日(火)、7月31日(水)、8月1日(木)、8月2日(金) |
---|---|
学校 | 仙台市立仙台青陵中等教育学校 |
対象 | 中学2年生1名、中学3年生5名、高校1年生1名、高校2年生9名 (全回出席者) |
テーマ | 納豆作りの謎 – 見えない生き物を利用した先人の知恵と発酵生産 – |
講師 | 東北大学大学院農学研究科 准教授 金子淳 氏 |
内容・目的 | 発酵食品である納豆の成り立ちを、納豆菌の性質を実験で確認しながら理解する。 講義: ①微生物とは何か、②無菌操作、③納豆の歴史、④吸光度と細菌の菌数の計測法、⑤PCRとアガロースゲル電気泳動(原理)、⑥納豆菌の条件(枯草菌とのゲノム比較) 実験: ①納豆菌のグラム染色を行い、細胞の大きさと形、染色性、および胞子の存在を確認した。 ②加熱処理した培養液と加熱処理していない培養液を2種類の培地に植菌し、シングルコロニーの形成、胞子の耐熱性、および培地の違いによる糸引きの違いを考察した。 ③スキムミルク培地にも同様に植菌し、プロテアーゼ活性を確認した。 ④pHの異なる液体培地に納豆菌を植菌し、振盪培養、660nmで経時的に濁度を測定し、増殖曲線から増殖速度を求め、培地のpHによる生育に対する影響を考察した。 ⑤納豆菌の溶菌液を鋳型とし、枯草菌のアミラーゼ遺伝子プライマーにより増幅、アガロース電気泳動に供し、ViewaBlue染色液で染色してバンドを確認した。 |
出前授業を受けた生徒さんたちへの質問と感想(講師まとめ)
◎今回の講義及び実験を通して,講座で一番興味を持った内容は?
- 身近にいる納豆菌の性質について驚いたことが多かった
- DNAを電気泳動で分析できるということ
- 納豆菌の縣濁液で菌の増え方が測れること
- 初めて使う機器類やPCR法などの説明が分かりやすく,理解できたこと
- 納豆菌をいろいろな方法で培養し,様々な実験器具も使用し,初めて経験することが多く楽しかったこと
- 分光高度計やPCR法,電気泳動など普段できない操作を経験できたこと
- 納豆菌の生育曲線をつかって増え方が理解できたこと
- 外国では同じ菌として分類されている納豆菌と枯草菌の違いがよく理解できたこと
- 初めて使う機器類に触れて,分析できたことが楽しかった
- 納豆菌を作る際になぜイナワラを使ったのかという理由について考えたこと
◎細菌の存在を知らない先人たちが作ってきた納豆作りの知恵の中で,「人間はすごい!」と思ったところは?
- 得体の知らないものを食べようと考えた人間はすごい!
- 先人たちの知恵を使って現代に生きる自分たちも利用していることがすごい!
- 偶然にもイナワラを使って納豆を作ったことがすごいし,それをたべたことがすごい!
- 納豆菌を作る際に,他の細菌を死滅させて納豆菌の胞子だけが生き残っているという納豆菌の性質を知らなくても,納豆の作り方や知識を院経験を通して利用したことがすごい!
- 経験の積み重ねで納豆が作られたのがすごい!
- 納豆のようにネバネバした異臭のような物質を果敢に食し,身近な食材にしてしまったことがすごい!
◎今回の講座で自分の将来について参考になった点は?
- 大学で行っている実験を経験することで,生物の学習に興味がわいた
- 将来自分が行いたかった実験などの知識に結びついたと思う
- 文系である自分が受講したことで,理系の知識を生かしながら違った分野で生物分野を使って活躍できると思った
- 医療系・生物系に進みたい自分にとって,今回の実験は大変役に立った
- 理系に進学希望の自分にとって,進路選択の幅が広がる講座となり,役に立った
- わからないことを追求する大切さを理解できた
- 実験を通して,生物分野だけでなく,物理や地学など様々な分野に繋がっていることがわり,様々な分野を学ぶ必要性が分かった
◎「農芸化学」という学問について
- 日常生活に深くかかわっている学問である
- 日常生活の中にも奥深い科学の部分がある。それを知ることのできる学問だ
- 人類の発展に重要であり,さらにより良い生活に繋がっていける学問である
- 名前から,農業に特化したイメージであったが,そこから派生した植物,動物,またそれらの住む環境や命全体に関わる,現代に必要な学問である
- 人間のためになるように化学,生物に応用している
- 農業関係の学問や生物の要素だけでなく,化学の要素も多く含まれていて,様々な分野で活躍できる学問であり,驚きがあった
- 実用性があって社会に貢献できる学問
出前授業風景