「女子中高生夏の学校2024〜科学・技術・人との出会い〜 」

本イベントは、女子中高生の理系進学支援を目的とし、科学技術振興機構(JST)をはじめ多くの団体・学協会の支援を受けて開催されてきた。今年は8月10日から8月12日にかけて国立女性教育会館(埼玉県比企郡嵐山町)にて、NPO法人女子中高生理工系キャリアパスプロジェクトの主催で実施された。本年度は116名の女子中高生が2泊3日の合宿を通して、49の協力団体が実施する実験・実習やポスター・キャリア展示を体験した。(詳細は以下のURLを参照)
http://natsugaku.jp/category/夏学2024/

日本農芸化学会からは八波利恵博士(東京工業大学 生命理工学院 准教授)と亀谷将史博士(東京大学 農学生命科学研究科 助教)、さらに中高生と世代が近いTAとして仙波玲奈氏(東京工業大学 生命理工学院 修士課程1年)と久我美彩子氏(東京大学 農学部 4年)が参加した。
「研究者・技術者と話そう」というポスター展示プログラムでは、学協会・企業の全37団体が出展し、それぞれの分野の魅力を伝えた。日本農芸化学会は「身近で役立つバイオの主役!農芸化学」と題し、農芸化学の特徴と魅力を紹介すると共に、酵素や微生物による触媒活性を可視化する実験を通じて、農芸化学分野の研究と日常生活との結びつきを体感してもらった。なお、ポスター展示は、前半・後半の2部構成となっており、前半は「ポスター展示」のみ、後半では「ポスター展示」と「進路・キャリア相談カフェ」が並行して行われた。これは、「ポスター展示」と「進路・キャリア相談カフェ」のいずれも時間延長を求める声が多かったための今年からの措置である。

  写真 写真
 

  写真
        進路・キャリア相談カフェ

「進路・キャリア相談カフェ」は、『農学』、『生物』、『化学』など分野ごとにわかれたブースで、女子中高生が科学者や大学生と交流できる場であった。これまで科学者がどのような道を辿って現在のキャリアに至ったのか、現在どのような研究を行っているのか、など生の声を直接聞ける場であり、どこのブースにも多数の参加がみられた。また、中高生と世代が近いTAには、勉強科目などに関する質問が生徒から寄せられ、生徒たちが熱心に話を聞き、質問している姿が印象的であった。ここからは筆者の個人的な話になるが、昨年受験生として参加していた高校生と、今年はTAとして再会することができた。彼女は「建築科に進学したいが、今回は該当する分野がなくて残念です」と言っていたが、それでも科学者や大学生と将来のキャリアについて相談をしていた。1年後に再会した彼女から、夏の学校の後に猛勉強し、見事希望する大学の建築科に合格したという嬉しいニュースを聞くことができた。今は、「専門領域の勉強がとても楽しい」とも教えてくれた。このように、夏の学校では、参加後にTAとしての参加を招待するシステムがある。そのため、TAとして参加した彼女は、「昨年度ここで友達となった子と再会できました」と嬉しそうに話してくれた。まさにこのようなつながりを作ってくれることも夏の学校の魅力の1つであろう。なお、彼女が話していた昨年は参加がなかった『建築』分野が、今年は加わっており、主催者の迅速な対応には敬意を表したい。 

昨年に引き続き、猛暑の埼玉での開催となったが、これからの科学界を担う女子中高生たちが、この学校を通じて幅広い世代の研究者の話を熱心に聞く姿を見て、彼女たちが充実した3日間を過ごしたことを確信した。今後もこのようなイベントが続いていくことを切に願う。

東京工業大学 八波利恵
東京大学 亀谷将史