2019年度大会を顧みて
日本農芸化学会2019年度大会(実行委員長 浅見忠男 東京大学大学院農学生命科学研究科教授)が、2019年3月24日(木)から27日(日)までの4日間、東京農業大学世田谷キャンパスと京王プラザホテルを会場として開催された。東京での開催は、20014年以来5年ぶりである。会期は、主会場となった東京農業大学ならびに懇親会会場となった京王プラザホテルの行事との調整により、昨年度の名古屋大会より9日遅い開催となった。事前登録者数が例年を下回ったが、当日登録が1,000名を超え参加者の総数には大きな影響はなかった。総参加者数4,606名(4,887名)、うち事前登録者3,019名(3,196名)であった(括弧内は昨年度数)。一般講演数は1,676件であり、昨年度と比較して200件以上の減少となった。しかしながら参加者数は例年並みであったことから、この減少は各大学の卒業式と重なったことが大きな理由と想定している。今大会では懇親会を除く行事のすべてを東京農業大学世田谷キャンパス内で開催することができた。特に一般講演と大会シンポジウムは全て一つの建物内で開催できたために、参加者にとってきわめて利便性の高い大会となった。会場を提供いただいた東京農業大学と関係者の皆様に厚くお礼を申し上げる。
大会初日は、例年の日程と異なり一般講演ならびに大会シンポジウム、ランチョンセミナー(3件)、JABEEランチョンシンポジウムそしてポスター発表が開催された。ポスター発表は今年度の試みであり、一般講演中からトピックス賞候補として選ばれた内容をポスターを前にして議論していただくことを目的としている。また一般講演と大会シンポジウムを並行して開催することによる参加者の興味ある講演が重ならないように、一般講演と大会シンポジウムの分野が異なるように日程設定を行った。
大会2日目は、東京農業大学世田谷キャンパス百周年記念講堂にて、学会賞等、農芸化学女性研究者賞等、農芸化学研究企画賞ならびにBBB論文賞の授賞式および表彰が行われた。授賞式のあとには、日本農芸化学会賞(2件)、女性研究者賞(3件)、功績賞(2件)、昼休憩をはさんで、技術賞(4件)、女性企業研究者賞(3件)、奨励賞(10件)若手女性研究者賞(3件)の受賞講演が行われた。
授賞式の様子 | 受賞講演 |
農芸化学奨励賞受賞者 | 農芸化学女性研究者賞等受賞者 |
また表彰式・受賞講演と同時並行して開催されたジュニア農芸化学会は、前日には大会シンポジウムやポスター発表の場であった1号館の会場を利用して、75校が参加して大規模に開催された。朝からポスター会場は参加者で一杯となり、高校生の熱心な発表と活発な質疑で、熱気を帯びていた。数多くの審査委員による厳正なる審査の結果、 金賞1件、銀賞3件、銅賞3件が選ばれ、表彰式を行った。また受賞発表には東京農業大学から学長賞も授与され、生徒たちにとっても記念となる催しとなった。
ポスター会場の様子 | ジュニア農芸化学会参加者集合写真 |
近年、年会と就職活動の時期が重なり、学生の参加者数減少の一因となっていることを踏まえて、名古屋大会で初めて学会会期中に会社説明会が企画された。この企業展が好評だったことから、今回は農芸化学企業説明会と名称を変更した同様の趣旨のイベントが大会2日目に開催された。24の企業と学生のべ222名が参加した。各企業による個別の説明会と、昼食時にランチョン形式でショートプレゼンテーションを開催した。参加した企業の担当者からは、好意的な意見が多く、学生、企業ともにメリットがある有意義な企画となった。
大会2日目の東京農業大学での行事終了後、会場を京王プラザホテルに移して懇親会が開催された。予想を越える653名の参加者があり、産官学からの参加者による活発な交流がなされた。今回、学生の懇親会参加者が90名と名古屋大会に引き続いて例年を大きく上回ったことは、注目に値する。また今年度より企画された企業研究者活動表彰者の表彰式も行われた。東京のお酒、大学発のお酒のコーナーが設けられ、これも概ね好評であった。例年通りビール、ワイン、日本酒を提供していただいた関係各社に感謝申し上げる。
懇親会の様子 | 企業研究者活動表彰受賞者 |
大会3日目は、大会初日とほぼ似た同様の内容であったが、一般講演ならびに大会シンポジウム、ランチョンセミナー(7件)、ポスター発表に加えて、BBBランチョンセミナー、男女共同参画ランチョンシンポジウム、分野融合連携シンポジウム、産学官学術フォーラムが開催された。
大会期間中、休憩場所で提供した飲料などは、数多くの農芸化学会関連の企業からご寄附いただいたものである。ランチョンセミナーの共催(財政的支援)をいただいた企業も含め、ご協力いただいた企業にはこの場を借りてお礼を申し上げる。
大会最終日は、午前中に一般講演と大会シンポジウム、ランチョンセミナー(1件)をはさんで、午後に農芸化学「化学と生物」シンポジウムが開催された。特に「化学と生物」シンポジウムでは想定した300名の参加者を大幅にうわまわる600名の参加者にご来場いただいたことから、急遽会場を1号館から百周年記念講堂に変更して開催された。迅速かつ柔軟なご対応いただいた関係者の方々に御礼申し上げる。
なお、最終日の午後から、レクトーレ湯河原(神奈川県湯河原町)で農芸化学Frontiersシンポジウムが開催された。講師7名に加えて95名の参加があり、シンポジウム、分科会、交流会を通して、活発な交流が行われた。参加者のアンケート結果からは、他大学の学生や若手の先生と知り合うことができ、非常に満足度の高いシンポジウムであったことが窺えた。
農芸化学Frontiersシンポジウム参加者 | ご寄付頂いたビール、ワイン |
最後に、本大会の開催にあたり会場をご提供いただいた東京農業大学、ご支援いただいた多くの協賛企業、準備段階から背後で多様な雑務を引き受けていただいた農芸化学会事務局メンバーに厚くお礼を申し上げます。また、本大会の運営はECH(イベント&コンベンションハウス)、エー・イー企画に委託したが、これにより大会実行委員会の負担が確実にしかも大幅に軽減できたことを申し送りする。一方で大会経費の削減も運営上の課題として挙げられている。今後、実行委員会が、学会本部、委託業者との役割分担をさらに明確化した上で連携することで、委員会への負担が少なく、かつ効率的な大会運営が可能になると考える。