2018年度大会を顧みて
日本農芸化学会2018年度大会(実行委員長 小林哲夫 名古屋大学大学院生命農学研究科教授)が、2018年3月15日(木)から18日(日)までの4日間、ホテルナゴヤキャッスルと名城大学天白キャンパスを会場として開催された。名古屋での開催は、2008年以来10年ぶりである。会期は、主会場となった名城大学の行事との調整、ジュニア農芸化学会の開催曜日の制限などにより、昨年度の京都大会より更に2日早い開催となった。事前登録者数が若干例年を下回ったが、当日登録が1,000名を超え参加者の総数には大きな影響はなかった。総参加者数4,887名(4,654名)、うち事前登録者3,196名(3,244名)であった(括弧内は昨年度数)。インターネット上でのプログラム公開を例年より1ヶ月ほど早め2月5日としたことが功を奏したかもしれない。今回2日目以降の一般講演のすべてを、名城大学天白キャンパスの南北2つの共通講義棟だけで開催することができた。参加者にとってきわめて利便性の高い会場を提供いただいた名城大学と関係者の皆様に厚くお礼を申し上げる。
大会初日は、9時からナゴヤキャッスル「青雲の間」にて、学会賞等、農芸化学女性研究者賞等、農芸化学研究企画賞ならびにBBB論文賞の授賞式および表彰が行われた。授賞式のあとには、日本農芸化学会賞(2件)、功績賞(2件)、昼休憩をはさんで、技術賞(3件)、奨励賞(10件)の受賞講演が行われた。
授賞式の様子 | 受賞講演 |
奨励賞授賞式 | 農芸化学女性研究者授賞式 |
受賞講演終了後、同じ会場で第44回農芸化学「化学と生物」シンポジウム第1部「スタチンとオートファジー 生命科学に革新をもたらした歴史的発見」が開催された。2017年ガードナー国際賞を受賞された遠藤章博士によるご講演「スタチンの発見と開発」では、画期的医薬品開発を前に次々と現れる難題を一つずつ解決し、それを実現した先生の研究に対する強い意志が感じられ、参加者に大きな感銘を与えた。最後に日本農芸化学会特別賞が贈られた。
遠藤章先生の講演 | 農芸化学会特別賞授賞式 |
18時30分より、会場を「天守の間」に移して懇親会が開催された。予想を越える725名(昨年633名)の参加者があり、産官学からの参加者による活発な交流がなされた。今回、学生の懇親会参加者が104名と例年(昨年60名)を大きく上回ったことは、注目に値する。中部地区のお酒、大学発のお酒のコーナーが設けられ、これも概ね好評であった。例年通りビール、ワイン、日本酒を提供していただいた関係各社に感謝申し上げる。
懇親会の様子 | 中部地区、大学発のお酒のコーナー |
大会2日目からは、名城大学天白キャンパスで、一般講演(1,878題)の他、学術活動強化委員会企画シンポジウム(2件)、農芸化学女性研究者賞等受賞講演(9件)、ランチョンセミナー(12件)、JABEEランチョンシンポジウム、男女共同参画ランチョンシンポジウム、BBBランチョンセミナー、産学官学術交流フォーラムと技術交流会(学会ミキサーと合同)などが開催された。
3日目に開催されたジュニア農芸化学会は、79校(生徒285名、引率教員93名)が参加する過去最大規模のものとなった。朝から、会場のタワー75の2階ポスター会場は、参加者で一杯となり、高校生の熱心な発表と活発な質疑で、熱気を帯びていた。数多くの審査委員による厳正なる審査の結果、 金賞1件、銀賞3件、銅賞4件が選ばれ、表彰式は2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞された大隅良典先生にもご出席をいただき執り行われた。なお、今回、希望者には特別に、農芸化学「化学と生物」シンポジウム第2部の大隅先生の講演会をサテライト会場で視聴することができるようにしたところ、 236名に及ぶ参加者があり、みな熱心に聞き入っていた。ジュニア農芸化学会に参加した高校生にとって、忘れられない貴重な経験になったと思われる。
ポスター会場の様子 | ジュニア農芸化学会参加者集合写真 |
今回、はじめての企画として企業展を開催した。近年、年会と就職活動の時期が重なり、学生の参加者数減少の一因となっていることを踏まえて、学会会期中に会社説明会を企画したものである。2日目および3日目に、31の企業と学生のべ1,094名が参加した。各企業による個別の説明会と、昼食時にショートプレゼンテーションを開催したが、後者は周知不足とランチョンセミナーと重なったためか、参加者は想定数を下回ったが、参加した企業の担当者からは、好意的な意見が多く、学生、企業ともにメリットがある有意義な企画となった。
企業説明会 |
3日目16時30分からは、農芸化学「化学と生物」シンポジウム第2部を開催し、大隅良典先生から「酵母から見えてきたオートファジーの世界」と題するご講演を頂いた。今回、本シンポジウムの時間には一般講演を一切開催せず、また多くの学会参加者が参加できるように主会場とは別に講演を生中継するサテライト会場を設けた。40年にわたるオートファジーの研究とともに基礎研究の重要性についてご講演いただき、参加者は熱心に聞き入っていた。講演のあとに、日本農芸化学会特別賞が授与された。
大隈良典先生の講演 | 農芸化学会特別賞授賞式 |
大会2日目から4日目の午前まで、体育館で附設展示会を開催した。出展企業93社(102小間)、バイオビジネスアピールエリア(16小間)による展示が行われた。会場の体育館が、一般講演会場のすぐ隣に位置していたため、多くの参加者に足を運んで頂けたと思っている。抽選会も好評だった。
展示会場の様子 |
大会期間中、休憩室と展示会場で提供した飲料、ミキサーで提供したビール、ワインなどは、数多くの農芸化学会関連の企業からご寄附いただいたものである。ランチョンセミナーの共催(財政的支援)をいただいた企業も含め、ご協力いただいた企業にはこの場を借りてお礼を申し上げる。
大会最終日は、午前中に大会シンポジウム(29件)、午後に産学官学術交流委員会企画シンポジウムが開催された。今回、大会シンポジウムでは、公募申請されたほとんど全てを採択したが、その結果、分野によっては複数のシンポジウムが開催されたところもあり、参加者の分散が危惧された。しかし、最終日にもかかわらず、多くのシンポジウムで期待した参加者数があり、活発なディスカッションが行われた。産学官学術交流委員会企画シンポジウムにも、多くの参加者があり、産学官の連携の今後のあるべき姿について、活発な議論がなされた。
産学官学術交流委員会企画シンポジウム |
なお、最終日の午後から、ホテル竹島(愛知県蒲郡市)で農芸化学Frontiersシンポジウムが開催された。学生の参加費を3,000円と押さえたこともあって、学部学生22名を含む91名の参加があり、シンポジウム、分科会、交流会を通して、活発な交流がなされた。参加者のアンケート結果からは、非常に満足度の高いシンポジウムであったことが窺えた。
Frontiersシンポジウムの様子 | 参加者全員集合写真 |
最後に、本大会の開催にあたり会場をご提供いただいた名城大学、ご支援いただいた多くの協賛企業、準備段階から背後で多様な雑務を引き受けていただいた農芸化学会事務局メンバーに厚くお礼を申し上げたい。また、本大会の運営はECH(イベント&コンベンションハウス)、エー・イー企画に委託したが、これにより大会実行委員会の負担が確実にしかも大幅に軽減できたことを申し送りする。今後、実行委員会が、学会本部、委託業者との役割分担をさらに明確化した上で連携すれば、大会実行委員会の実務はさらに軽減されると思われ、会員数の少ない支部でも将来を見据えた企画の導入など発展的な大会開催が可能になると考える。
2018年度大会実行委員会総務
西川俊夫