会長より(第63代)
会員のみなさまへ
2021.09.13
第63代日本農芸化学会 会長 松山 旭
2021年5月21日に日本農芸化学会会長として選任されました松山旭でございます。この場をお借りして、会員の皆様に一言ご挨拶を申し上げます。
日本農芸化学会は、1924年に鈴木梅太郎博士によって設立され、3年後の2024年には100周年を迎えます。我が国独特の研究分野である「農芸化学」は、生命・食・環境に代表されるような「化学と生物」に関連した領域において、基礎から応用に至る研究を包含する学問分野です。本学会は、この学問分野の研究の進歩・普及のみならずこの分野に携わる研究者・技術者の育成を図り、多種多様な成果を人々の生活に資することに努めてきました。2012年に公益社団法人として再スタートをきり、2017年には公益財団法人農芸化学研究奨励会との合併を実現し、名実ともに農学系最大の学会として社会に貢献し、発展してこれたのは、歴代の会長をはじめとする諸先生方の、多大なご尽力の結果であります。心より敬意を表すとともに感謝申し上げる次第です。
農芸化学の農芸という言葉には、単なる農産物(加工品を含めて)ではなく、それらに技術的な加工を加えたものという意味が込められていると考えられます。大学・研究機関を中心に実施されてきた基礎・基盤研究から得られる成果を企業集団が巧みに応用し、私たち消費者の期待に応える様々な価値が農芸化学分野の成果として世の中に数多く送り出されています。そしてそれらは、社会に還元され、持続可能な社会・世界への貢献となっています。国連の掲げるSDGs(Sustainable Development Goals)の項目の多くには農芸化学が担う技術が必須であり、農芸化学の重要性は今後さらに増すものと思います。例えば、持続可能な農業の推進(ゴール2)、環境浄化やクリーンエネルギーの技術(ゴール6、7)、海洋・陸上の天然資源の効率活用やリサイクルのための技術など(ゴール12、14、15)、また、これらの成果を利用して持続可能な産業化を推進することもゴール9に書かれています。
私は本学会では初の企業からの会長として選出いただきました。本学会は100年近い歴史の中で、産官学連携が非常に良好に行われてきた学会です。次の100年に向けて産官学連携を一層積極的に進め社会、人々に貢献する学問成果を生み出すことを推進していく足場作りを行う学会に発展させることを期待されていると考えております。本学会がアカデミアとインダストリーの共創を進める場の提供に寄与する大きなプラットフォームとしての存在を確立し、産官学の研究者、技術者が、ここにいることに魅力を感じ、積極的に協働し続ける、そのような学会作りを目指して行きたいと思っております。また、本学会の大きな特長に、地域と密接に連携した支部活動があります。この支部活動を通して地域の企業、産業との連携をさらに進めます。本部と支部の活動が協調することにより、農芸化学領域の研究成果が人々により貢献していくような姿を支える学会の取り組みをいくつか実施していきたいと思っております。
COVID-19の影響で、2020年度大会の現地開催は見送り、2021年度大会は、授賞式と受賞講演はハイブリッド方式で一般公演とシンポジウムはオンライン方式で行われました。農芸化学分野でも研究・開発、教育活動は、会員の皆様の大きな努力のもと活発に続けられております。コロナ感染が完全に収まるのか未だわからない状況が続いておりますが、次の100年を見据えて、大会、講演会等の在り方を大至急検討し、これからのライフスタイル、働き方にあった魅力ある学会活動とサービスを目指して、皆様のますますのご支援とご協力を賜りたくよろしくお願い申し上げます。