会員のみなさまへ

2013.05.02

第59代日本農芸化学会 会長 清水 誠

日本農芸化学会会長:清水誠

  2013年4月26日に日本農芸化学会会長として選任されました清水 誠でございます。本会は昨年2012年に公益社団法人としてのスタートを切りましたので、私は公益法人化後、初めて選任された会長ということになります。選任の時期がこれまでと異なるため、3月末の年次大会の席上で会員の皆様にご挨拶を 申し上げることができませんでした。この場を借りまして、一言ご挨拶を申し上げます。

 初代会長、鈴木梅太郎先生に始まる90年の歴史を持つ本会は、これまで様々な問題に直面しつつも、歴代の会長をはじめとする諸先輩のご尽力によってそれらの困難を乗り越え、また数多くの新しい試みに挑戦することによって、我が国を代表するバイオ系の学会として発展してまいりました。今回の公益法人化につきましても、太田明徳前会長、清水 昌前々会長をはじめ、これまでの会長の先生方が、この10年余の間に少しずつ学会の体制を変革し、その実現に向けて努力された結果であります。心より称賛と感謝の意を表したいと思います。

 今期の会長としての責務の第一は、公益化に伴って導入された様々な制度や方針、例えば学会組織の改変、会計・財務上の変更、活動の公益性の重視、情報公開の拡大などに対し、本会がきちんと適応していけるように引き続き努力することと考えています。公益法人化という制度改革の中で、本会の本来あるべき活動が滞ることのないように注意を払いつつ、学会の公益化を名実ともに定着させなければなりません。

 同時に、公益化のための実務的な作業が一応終了したところで、日本農芸化学会が今後目指すべきものは何か、会員が学会に求めているものは何か、というような『学会の理念』、本質論に立ち返った議論を行うことも重要な責務と考えております。本会がこれから遭遇するであろう様々な困難に対し、それらを克服していく際の最終判断は、学会の理念によってなされるべきだと思うからです。

 私個人は、農芸化学とは『人類が常に直面している課題(生命・健康を支える食糧や環境の問題)を解決するために役立つ科学』であり、『産業を活性化し、経済を活性化することで社会を豊かに元気にする力を持つ科学』と考えています。人類の幸福を目指す上で不可欠な学問領域である農芸化学の地位を強化し、それを支えている研究者や技術者を鼓舞し、国内外での活動を活性化することは本会の重要な使命です。特に若い世代の研究者・技術者に『農芸化学』という言葉の意味を正しく伝え、農芸化学分野で働くことの誇りや楽しさを知っていただけるようにするための努力を怠ってはなりません。大学生、中高生といったさらに若い世代、そして一般の生活者への教育・啓発活動への取り組みも引き続き強化する必要があります。

 これまでも本会では、全国大会支部大会の実施、和文誌英文誌の発行、授賞産官学の連携の推進、社会に対する農芸化学教育啓発活動など、学会員のメリットになり、かつ公益性の高い様々な活動を推進してきました。また、時代の要請に応える形で、常に新しい試みを行いつつ活動内容の修正を行ってまいりました。

 太田前会長は、東日本大震災からの復興、公益法人への移行という2つの極めて困難な課題を抱えながらも、本会の抱える問題点の洗い出し、その解決に向けた議論を積極的に進められました。学会の財務の問題、学術活動強化の問題、学会誌の編集に関わる問題などの具体的な課題の解決に向けて、指針等の提案もすでにうかがっております。現執行部に引き継がれたこれらの事項に真摯に取り組んで参りたいと思っております。

 来年度(2014年度)大会は東京で開催されます。明治大学生田キャンパスから農芸化学の研究成果が多数発信されることを期待するとともに、その場で会員の皆様方とお会いすることを楽しみにしております。これからの2年間の皆様のご支援とご協力をよろしくお願い申し上げます。