著者・協力者
MENU
メニュー
1章
2章
3章
4章
5章
6章
7章
8章
9章
10章
11章
12章
13章
14章
15章
16章
17章
18章
19章
20章

9章 遺伝子組換え

1.遺伝子組換え技術
【解説】
 遺伝子は、タンパク質の構造を決め、そのタンパク質の働きを通じて生物の特徴(形質)を決めます。しかし、遺伝子組換え技術の登場以前は、生物のある形質を決めている遺伝子を調べる一般的方法はありませんでした。ショウジョウバエでは染色体の模様と形質が対応づけられ、また大腸菌やそのウイルスであるバクテリオファージでは、一部の遺伝子の並び順や遺伝子間の相互作用が研究されていました。しかし、具体的な分子レベルでの機構や、逆に全体像の方もほとんど不明でした。
 現代では基本的にほとんどすべての遺伝子を知ることや利用することが可能です。遺伝子組換え技術は、考え方として、(1)目的の遺伝子を純粋に取り出す、(2)その遺伝子の構造を解読し、性質を調べる、また多くの場合は、(3)その遺伝子に何らかの手を加えた後、生き物に導入して発現させ、その生き物の性質を変える―という3つの段階から成り立っています。
 (1)を、遺伝子クローニングといいますが、ふつうは(2)まで行って初めて欲しい情報が得られます。基礎的研究では(2)までで用が足ることも多く、つねに(3)まで行われるわけではありません。しかし、実は(1)と(2)の研究段階でも大腸菌に遺伝子を導入することによって実験を進めますので、その意味では大腸菌を宿主として(3)まで行っているとも言えます。
 以前は、遺伝子ごとに工夫を凝らして遺伝子をクローニングしていましたが、現在は、1つの生物の遺伝子情報のフルセット(ゲノム)を全部決めてしまい、その全体像の中から1つひとつの遺伝子の働きを考えたり、操作したりする方法が増えてきました。ゲノム情報が決定された生物種は、ヒトやイネを含め500種を越え、今後も加速度的に増え続けるでしょうが、ゲノム情報のない生物でも、他の生物のゲノムデータベースが遺伝子クローニングに役立ちます。



Copyright(c)2006
Japan Society for Bioscience,Biotechnology,and Agrochemistry.
All Rights Reserved.